「偵察に出て、生き残ったのはお前達だけか。よくぞ戻ってきたな。銀闘士達よ」


教皇は厳然な態度で重く口を開く。


「……」


私は覚悟を決めて椅子に鎮座していた。


「申し上げます」


銀闘士達は静かに膝を折って進言した。


「やはりイタリアでの冥闘士達集結の情報は確かでありました。その地では今や不可解な事件が次々に起こり、住人達は恐怖で脅えています」


……、やはり。


鎮痛な顔で私は眉を八の字に曲げた。

聖戦、そしてハーデスの復活。避けては通れないのだ。


「探索を続けた我々は森の中で不審な大聖堂を見つけ冥闘士達と抗戦……、一人残らず全滅させられる事となりました」


「っ、全滅!?」


シオンが目を見開く。


「そう……全滅」

「…!?」


なにか…嫌な気配が


(まさか……っ!!)


「死ねぇアテナぁあ!!!」


銀闘士達がいきなり立ち上がり、襲い掛かってきた。

「血迷ったか貴様ら!!」


童虎達が立ち塞がり、攻撃を受け止める。


すると、冥闘士の闘気が彼らを包み込んだ。


「なんだ…銀闘鎧の…輝きが、まるで冥界の宝石のように……っ!!」


「冥鎧ではないか!!」


「そうよ。俺達は最早、アテナの闘士ではない。冥王様は救いを下さると仰ったのだ!!」


(違う…アテナ…っ!!)


「ー――っ!!」


不意に彼らの心が耳に響いてきた。


(我々は…本当は…っ!!)


「……っ!!、童虎!シオン!!待つのです!!」


立ち上がって彼らを止めるも、何もかもが遅かった。


二人が技を放ち、彼等が吹き飛ばされる。


「ケルベロス!!アウリガ!!サティガ!!」


「ア、テナ……、」


彼等に駆け寄るとケルベロスは震える手を私に差し伸べてきた。


「死人になって操られたあなた達の小宇宙を感じました……苦しかったでしょうに」


彼の手を握りしめると、彼等の苦しい気持ちが伝わって涙が溢れる。


「アテナ……我々は本当は……アナタのお側で共に戦いたかった……」


「あ…ぁ…っ」


砂となり彼等の姿が消えてゆく。


「アテナ、教皇、我ら二人に出撃の命をお与え下さい」


シオンと童虎が膝をつき頭を下げた。


「自らの手で同胞を討たねばならなかった無念をどうか晴らされて頂きとうございます。」


シオン…童虎…



「よかろう、童虎、シオン……銅闘士と銀闘士を数人選び、イタリアへ飛べ。目指すはケルベロス達が行った森の奥にある大聖堂だ」






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