愛を知り尽した娘




愛を知り尽くした娘







「テンマ!アローン!サーシャ!」


一人の少女が草原の中、手を振りながら駆けてくる。彼女の喜びは木陰で休んでいる少年達に注がれていた。


「おっせーぞコレット!」


「ごめんね、ちょっと花冠作りに時間掛かって…」


『花冠?』


「なんだそれ」


三人が首を傾げた。その瞳は興味深げにコレットを見上げている。
「えへへ!見てみて」


コレットが自慢気に後ろ手に握っていた花冠を前に掲げる。


「わぁ!凄いわコレット!作り方教えて!」


「勿論いいよっ!あ、ハイ。アローン」


「えっ?」


「誕生日おめでとう!」


そう言ってコレットは花冠をアローンに被せた。


「あ…、ありがとう」


「ちぇっ…アローンの分はあって俺の分はないのかよ」


俯いて頬を染めるアローンにテンマは口を尖らせる。


「ふふっ、だってアローンの誕生日だもの」


「…それはそうだけどさ」


「あー!もしかしてテンマ、兄さんに嫉妬してるでしょ?」


「ち、違ぇよッ!」


クスクスとサーシャがテンマの方を向いて悪戯っぽく笑うとテンマは慌てふためく。


「でもコレット、よく覚えてたね、僕の誕生日」


サーシャがテンマをからかっている中、アローンが嬉しそうに口を開いた。


「当たり前だよっ!私がアローンの誕生日を忘れるわけないじゃない」


「コレット…」



…ありがとう。

可愛らしく笑うコレットにアローンは目を細めて笑った。





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