聖域




ー――聖域…


(星の流れが早い…)


黄金の杖を強く握ったまま私は星を見上げるのが最近の日課になっていた。


(近頃の冥王軍の動きといい、星の流れ、そしてペルセフォネの小宇宙…)


それを考えるとなかなか寝付けなかったからだ。


幾日経っても彼女は見つからない。



(もしかしたら…)


もう彼女は冥府軍に…?


ドシャ!


ゴーンッ!!


「いってぇ!!」


「――っ!!」


背後から落ちて当たる音が聞こえ、思わず振り返るとテンマがいた。


「よぅサーシャ」


「テンマ!!」


傷だらけで入ってきたテンマは頭を擦りながら立ち上がる。


「いったいどうやってここに…!?」


ここはアテナの別邸。

そう簡単には入れない筈…。

「へへ秘密だ」


笑いながらテンマはバルコニーに近づく。


「二年前、あのワームとかいう冥闘士に襲われてからなかなか会えなかっただろ?色々話したいこともあったけどお前アテナだもんな」


「だからって…相変わらず無茶ばっかり」


昔からそうだ。


コレットが巣に卵を返したいって言った時もテンマが「俺がやる!」って言い出して、木から落ちそうになったことを思い出した。


「テンマ、覚えてる?私たちの小さい頃のこと」


「え?」


「優しくて誰も傷つけることないアローン兄さんを守る私とその兄妹を守るテンマ。そして乱暴者のテンマを止めるコレット…」


『こら!テンマやりすぎだよ!』


そう言ってコレットは説教していたな…。


「どんな時でも二人共すぐに駆けつけてくれたね」


「そうだったな。だから俺、お前が貰われていった時、お前の分もアローンとコレットを守ろうって決めてたんだ」




手すりに肘を置きながらテンマは無邪気に笑った。笑顔は昔から変わらない。


「………冥闘士が集結しているのは俺達の故郷の近くだってな…」


するとテンマは顔を伏せて小さく呟いた。





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