森を抜けるとあの大聖堂に着いた。 いつも閉ざされている大聖堂の扉が開いている。 「お待ちしておりましたよ」 胸に手を当てて膝を折っていた男の人が顔を上げる。 (この人は…) 以前教会に僕の絵を見に来た人… 「どうぞこちらに」 誘導されるままに聖堂に足を運ぶ。 (この奥に…僕の見たかった絵が…) コツッ、 「!」 一歩足を踏み込むと自分の影に驚いて目を見開いた。 (僕…じゃない) 影は大きな姿で鎧らしき物を着ている。 思わず神父様を見上げると彼は口元に笑みを浮かべたまま頷いた。 (テンマ…コレット) 僕は救われたい… あの絵を見たいよ!! ぎゅっと胸元のペンダントを握りしめ走り出した。 そうすれば そうすればきっと…! 奥深くの部屋に辿り着いた僕は絵を隠している布をバッと引き剥がす。 「!!」 だが、その絵は救いの絵ではなかった。 僕の目指していた絵とは異なる地獄絵図のような絵が目の前にある。 僕は人の心を救えるような絵を描きたかった。 森の大聖堂には僕の目指す絵があるといわれていた。 罪人ですら悔い改めて涙する聖人の絵。 なのに―― 「これが救いの絵…」 失望するよりも僕はこの絵を見て驚いた。 (どうして…僕と同じ顔なんだ…) それに傍にいる女神らしき人物はコレットに似ている。 「アローン様、あの姿こそ貴方様の真の救済者の姿なのです」 ほら…と神父様は絵に指を差す。 「あそこにも救われた者たちが…」 指の先には僕の育った孤児院が佇んでいた。 まさか… まさか… 扉を開くと皆が血を吐いて死んでいた。 「わぁあああああ!!!」 みんなっ!! みんなぁあ!! 僕は駆け出すとコレットの友達だったアニスの顔を触る。 目を開いたままアニスは既に息絶えていた。 「三日前にこの子たちの絵を描いたのでしょう?愛情をこめて。だからですわ」 「僕が…僕が絵を描いたから!!」 みんなを殺してしまった……っ!! . [mokuji] [しおりを挟む] |