僕はコレットに言って森の大聖堂の近くで絵を描くことにした。 コレットの言葉を信じたい。僕の絵には“死”の力はないと―― でも… 僕の目の前には動物の死体が転がり、そして枯れ果てた森の姿があった。 (そんな…) ただ目の前に広がる綺麗な風景を描いただけなのに、絵とは逆の世界が面前に広がっている。 (あぁ…やっぱり、) 僕が描いたものは全て 死に絶えてしまうんだ。 絶望の声色を出して膝を着くと風に靡いて今まで書いてきたイラストが飛んでゆく。 まるで僕から逃げるように。 「お可哀想に。清らかな貴方様が罪の意識に震えるなんて」 気がつくと枯れた木にもたれ掛かりながら僕を見ていた女性がいた。 「君は…」 パンドラ…あの時の… 僕をハーデスと呼んだ女性だ。 忘れていたはずの記憶が蘇る。 「人の心を救う絵を目指す貴方様の描く絵は全て正しく美しいのです…何故なら」 両手を広げて彼女は傍に寄ると膝をついて僕を抱きしめた。 「最終的な…究極の救いとは死なのですから」 「死が…救い…?」 「まずは貴方様の救いが必要なようですね…参りましょう」 「!?、どこへ…?」 「森の大聖堂ですわ」 パンドラは僕の手を拾い上げると走り出した。 「大聖堂にはどんな罪人も悔い改める聖人の絵があるのはご存知でしょう。その絵を一目見るのが貴方様の夢。」 走っているのに彼女は息切れひとつ起こさずに言う。 「ならばその願い…叶えてさしあげますわ」 (僕は…) . [mokuji] [しおりを挟む] |