「そろそろ、だな」 風が靡き、神父…いや、死の神は嘲笑する。 絶望の始まりを告げる風に向かって。 「タナトス様」 漆黒の髪を靡かせながら女が伏す。 「パンドラか」 タナトスと呼ばれた男は無気質な表情でその女、パンドラを据えた。 「冥王軍は着実に集まりつつあります。」 「そうか。目覚めの時は近い。――パンドラ」 「はっ!」 パンドラは深く頭を下げる。 「ハーデス様が目覚める時には、あの方も冥王へ連れていく」 「…っ!!、そ、それは…っ」 瞳を揺るがしてパンドラは酷く狼狽えた。 「不服か…?」 「いっ…いいえ、そんなことは…」 だがパンドラの表情には戸惑いがあり、目線をそらしている 「きっと今度こそペルセフォネ様の実心は変わられるはずだ。」 (だからこそ御二人を別れさせずにそのままにしているからな) 「…タナトス様、彼女がもし冥界行きを拒まれた際には如何なされますか?」 「その時はあの頃と同じ無理矢理にでも冥界に連れて行くまでよ。」 「…畏まりました。」 口角をつり上げて笑うタナトスにパンドラも小さく笑んだ。 . [mokuji] [しおりを挟む] |