死の絵。そして終焉




テンマが出て行ってから二年が経つ。


だが、二年経っても貧民街は変わらずひっそりとしており、孤児院も子供が減ることはなかった。

二年も経つとコレットもアローンもすっかり成長し、顔立ちも背丈もだいぶ幼い頃と変わった。


特に女性というのは身心の成長と共に美しくなる不思議なもので、コレットは一見孤児院にいるとは分からない程の気品、そして憂いを持ち合わせていた。


もっと年月が経てば成長と共にその美しさに磨きがかかるだろうと町の者達も践んではいるし、周りのシスターからはさぞかし良い縁談が来るだろうと考えてコレットの幸せを願っていた。


だが、当の本人はそんなの望んでもいない。


三人でまた一緒にいられるのであれば彼女はお金も地位もいらなかった。


コレットとアローンは孤児院から出ると、自立することになり、二人で小さな家に住んでいた。


アローンは神父のところで働きながら絵を描きに行く。


コレットも一緒に働きながらアローンの絵を眺めていた。



だが、時間が経つにつれ決定的に変わってしまったのがある。



それは…アローンの絵から生気が消えたこと。


アローンの描いたものは呪われたように全て死に絶えてしまう。


「アローン…」


コレットが街から家に戻るとアローンが膝に顔を埋めて泣いていた。


「どうしたの…?」



コレットは優しく問いかけるとアローンの肩が震えていることに気づく。


「コレット…今日、先生が亡くなったんだ」


「!?、神父様が…」


それはいつもアローンが絵を教えてもらっている街の神父で、コレットとアローンがお世話になっている方だ。


「でも…なんで急に…」


「僕がっ…!僕が殺したんだ……っ!!僕が先生を描いてしまったからっ」


アローンは顔を上げて悲痛な声で叫ぶ。


「アローン…」


「コレット、僕は…っ!僕はっ…もう、自分がどうしたらいいのか分からなくなる…世界が灰色に見えるんだ」


面を伏せたアローンは両手で顔を覆う。





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