「…んっ」 「気がついたか?コレット」 「良かった…目が醒めたみたいだね」 瞼を開けると案じ顔で覗き込んでいるテンマとアローンの姿があった。 後ろには孤児院のみんなの姿。 「テンマ…アローン」 「大丈夫かよ、お前、孤児院の前で倒れてたんだぜ?」 「えっ…?」 コレットの脳裏に森の大聖堂のぼやけた映像が映る。だが、それだけしか思い出せない。 「コレットが寝ている間大変だったのよ! 山の川の水が溢れてこの貧民街の方へ溢れ出したんだからっ!」 「えっ!?大丈夫だったの!?」 「おう!俺が街を防いでいた大岩を砕いたからな!!」 「砕いた…?」 テンマが胸を張って主張すると横にいたアローンが苦笑する。 「テンマはね、聖闘士の資格があるみたいなんだ。」 「聖闘の…」 コレットは目を伏せて哀しげに呟くとテンマを見据えた。 「テンマは女神(アテナ)の聖闘士になるの?」 「コレット…、」 聖闘士の資格がある。 このことは本来なら喜ばしい事だが、それは同時に別れを意味している。 コレットは訊く間でもなく彼が聖闘士になろうとしていることは分かっていた。 「…頑張ってね、応援してるよ」 無理に笑ってコレットは言う。端から見たら泣きそうな子犬のようだ。 「コレット…俺、女神の聖闘士になったらお前を守りに帰ってくるよ。」 「テンマ…――うん」 帰って来るよね。 サーシャもいなくなって、テンマもいなくなって、アローンもいなかったら私は…どうしたらいいんだろう。 . [mokuji] [しおりを挟む] |