「どうぞこちらに」 目の前にある絵に引き寄せられるまま、コレットは絵の前に近づく。 そして神父が静かな動作でカーテンを引く。 絵は断罪を許す聖人の絵。 そう思っていた。 だが、視界に広がっているものはそれとは正反対だった。 (なに…これ…) アローンに似た青年が地面に這いつくばっている屍達を穏やかな眼で見下ろしている。 そしてその彼を抱き締めながら、哀しげに人間だった者達の成れの果てを眺めている女の姿。 その女は自分に瓜二つだった。 「なんで…」 アローンと私の…顔が… コレットは呆然と立ち尽くし、目の前にある絵に意識を失いかけた。 「目をそらしてはなりませんコレット様」 ふらつくコレットの身体を支えて艶やかな声色で口を開く。 「あの姿こそが貴女やアローン様の本当の姿なのです」 ドクン、と胸が騒ぐ。 「ご存知ですか?光の作る全ての色が混じり合うと最後には“闇色になる”そうです」 「あ…」 「貴女様は気づいていらっしゃらない。貴女様こそ光の色。」 「ち…違います…っ!!」 神父の手を払い、コレットは彼の方を振り向く。 「似ているだけであって私達ではありません!なにかの間違いです!私は…っ」 「相も変わらず清らかな方だ。なにがあろうと決してあの方に屈せぬ悲壮美な女神」 「な…、なに言って…」 戸惑うコレットに対して神父は胸に手を当て、恭しく跪き告げた。 「ずっと探しておりました。我等の姫“ペルセフォネ”様」 ……テンマ、アローン サーシャ… . [mokuji] [しおりを挟む] |