久遠の箱庭




「うーん良い景観だなー!!」


巨大なペガサスの背に乗りながらメフィストフェレスは帽子を上げて言った。


ペガサスが翼をはためかせる度に無数の羽が舞う。


「どうして空を飛ぶ必要があるんですか…っ!?」


上空にいる恐怖に耐えながらコレットはメフィストフェレスに諮問する。


いくらペガサスが大きいからとはいえ背中には掴むところがない。


それに羽ばたき動く度に身体が揺れ動いて不安定な状態だ。


これが怖くないと言えるわけがない。


「どうしてって、外に出る為に決まってんだろ?」


「た、確かに言いましたがペガサスに乗るなんて一言も…っ!!?」


言いかけた刹那、身体がフワリと一瞬だけ身体浮き上がり心臓が跳ね上がった。


目的地に近づいた事により降下し始めたのだろう。


だが飛行が安定しても心臓が未だに鳴り止まない。


「んー?何か言ったか?」


「……っ、なんでもないです」


「へぇー」


冷たく言ったのに何故かメフィストフェレスはコレットを見て卑しい笑みを浮かべている。


「…なにか?」


「…いやァ」


ムッとした口調でコレットは言い返すとメフィストフェレスは足を組んで座り込んだ。


「強情で素直じゃないところがパルティータちゃんにそっくりだなって思ってさ」


膝を使って頬杖を作り、メフィストフェレスはコレットを見据える。


「パルティータ…?」


「そ。オイラのお嫁さん、美人で辛い事があってもよく笑ってたぜ」


「……」


懐かしむような、愛おしむような眼差しをしている今の男は冥闘士でもメフィストフェレスでもなく¨人¨の表情をしていた。


恐らくパルティータという女性はテンマの母親だろう。


「やっぱ親子は似るっていうからなー!テンマがコレットちゃんが好きなのも………いや、お前達は違うか」


「え…?」


帽子を深く被り直しながら何か言いかけたメフィストフェレスにコレットは首を傾げた。


だがメフィストフェレスは誤魔化すように立ち上がり言った。


「さ、そろそろ着くぜェ。¨久遠の箱庭¨だ」








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