新しく築き上げた城の周りは遥か昔、前聖戦の時のままの状態だった。 先には神の門が控え、後ろには死した人を裁く地獄の魔宮が数ヶ所も続いている。 (この世界にもやっぱりあるんだよね…) 神に逆らった者達が死して尚、永劫の苦しみを与えられている場所。 氷結地獄。 前聖戦の女神の戦士達が変わり果てた姿で朽ちている場所だ。 「……」 複雑な思いを抱えながらコレットは窓際に手を添える。 (自分の信じてる正義の為に命を落とし…そしてまた死んでも苦しんで…彼らは安らかに死ぬことすら許されないまま苦しみを繰り返す…) 何度も、何度も。 ここだけではない他の魔宮だってそうだ。 死んでもまだ苦しめられている。 (貴方はどうしてこんな場所を創ったの……?) ハーデス。 人間を苦しめようとしている彼と違ってアローンの目指しているのは死への救済。 安らぎに満ちた地獄を創ろうとしている。 それは果たして間違っているのか否か、今のコレットには分からない。 だからと言って後戻りも出来ないし、自分が死の女神であることは変わらないのだ。 (それに聖戦を引き起こしたのは私…) アローンをハーデスに変えてしまったのも自分の責任。 彼の苦しみに早く気づいてあげられたら聖戦など起こらなかった筈だ。 彼がハーデスとして目覚めることもなかった。 「……、」 フッと溜め息を吐いた瞬間、死を望む数多の人の叫び声がコレットの脳内を駆け巡った。 「っ、あぁ…」 膨大なる人々の声音に耐えきれずコレットは体勢を崩した。 . [mokuji] [しおりを挟む] |