「………、」


衝撃が身体中を駆け巡り、コレットはハッと目を見開いた。


天井が瞳に映るが、それよりも頬に伝う¨雫¨に手を添えた。


(なみ…だ…)


身体を起こし、濡れた指先を見つめたコレットは自然と胸元を握りしめる。



(胸が、痛い…)


もちろん外傷はない。内側から締めつけられるような痛みだ。


だが原因が分からない。


どんな夢を見ていたのか、起きるまではハッキリ覚えていたのに起きたらその記憶がスッポリと抜け落ちてしまった。


「……っ、」


チリッと首筋に微かな電流が走り、コレットは首元に手を当てた。


だが触れても痣も傷らしき痕もないように思える。


気になったコレットはベッドから降りて化粧台の鏡で首筋を見た。


(…なんだろ、これ…)


刺青のような、赤い色の小さい紋章が刻まれている。


ペルセフォネの刺青なのかと思考を巡らせてはいるものの、覚えがない。



コンコン、


扉を軽く叩く音が部屋に響き、コレットは扉のある方を振り返った。


「お目覚めでございますか?ペルセフォネ様」


どうやら扉をノックをしたのは冥王軍に従う女官のようだ。


「…はい。」


「では朝のお支度を始めても宜しいでしょうか?」


「…えぇ」


(この痣が何か分からないけど…今は気にする場合じゃないよね)


コレットはそう思い、浮かんできた疑問をすべて振り払った。






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