頂上に着くと巨大な門がコレット達の前に佇んでいた。 「お待ちしておりました」 門前で左右に分かれている冥闘士達が跪き、頭を下げた状態のまま口々に言う。 跪いている冥闘士達の中には輝火やアイアコスの姿もあった。 「…揃ったようだな」 落ち着いた口調でアローンは微かに笑みをよぎらせると、スッと腕を横に振り翳した。 袖口が風で広がり、綺麗なハープが現れる。 「爪弾け、パンドラ」 「はっ…」 弾き手に指名されたパンドラは深々と頭を下げてハープの側に寄る。 「ペルセフォネ。お前の美しい歌声を余に聞かせてくれ」 アローンの優しい声色に合わせてパンドラがハープを奏で始めた。 ハープから紡ぎ出される音色は悲しくも美しい音の世界へと導く。 コレットは少し躊躇うが意を決して顔を上げると、ハープの音色に合わせて歌い始めた。 コレットの歌声に応えるように突如として現れた暗雲が空を浸食しアローンの描いた人達をすべて呑み込んだ。 闇に浸食された人達の身体から魂が抜け出し、逃げるように扉に吸い込まれていく。 (これがすべての罪を闇の中に流し、その魂を黄泉へと導くとされている鎮魂歌…) (噂には聞いていたがまさかこれほどとは…) コレットの歌声に酔いしれながら冥闘士達は扉に吸い込まれていく無数の魂を見据える。 「…流石は余の后だ」 フッと笑い、アローンは筆を取り出すと扉に×の字を描いた。 扉は重々しい音をたてて静かに開く。 「さらば地上よ。余は空よりお前達を統べてやろう」 彼の洩らした独白はハープの音色とコレットの歌声で掻き消えた。 . [mokuji] [しおりを挟む] |