「城が…崩れてゆく」 崩れ落ちてゆくハーデス城の様子を上空から馬車で俯瞰していたコレットは思わず呟いていた。 あの後アイアコスと別れて馬車に乗り、すぐに城から離れたがまさかこんなにも早く崩れてしまうとは思わなかったのだ。 いや、違う。 (ハーデスの力を感じる…これは彼が自分で壊したんだ) テンマの気配もいつの間にか消えている。 (もしかしてアローンはテンマを…) 「っ…」 信じたくないが、可能性は否定できない。 「ペルセフォネ様、如何されましたか?」 スッと影が話しかけきた。ベヒーモスだ。 アイアコスと別れる前に彼が代わりとして彼女をコレットの護衛に選んだのだ。 「大丈夫です。少し…考え事をしていただけですから。」 「さようでございますか。…では何かありましたらいつでもお呼び下さい」 人の形をとっていた影が戻り、彼女の気配が消える。 ガタン。 「−−!」 突然、馬車がピタリと足を止めて停止した。 (どうしたんだろ…?) 気になってコレットは格子から様子を眺めると上空から階段らしきものが現れた。 (あれは一体……) 透明な階段はハーデス城から長く続いており、天空まで届いている。 再び動き始めた馬車はその透明な階段に引き寄せられるように近づいた。 近づいた階段にはアローンが立っており馬車は丁度、彼の側で止まる。 「おいでペルセフォネ、」 余の許へ−−。 アローンが手を差し伸ばし、コレットを自分の許へ誘う。 コレットは扉を開けるとそのまま差し出された手を引かれ、ふわりと階段に降り立った。 透明の階段は見た目とは違って頑丈で、ビクともしない。 「この階段はどこまで続いているの…?」 「冥界に最も近い場所…新しく作った居城まで続いている。余の城は無粋な聖闘士共のせいで無惨な姿になったからな」 「新しい…城」 「世界の終わりも近い。余はそこでロストキャンバスを描き終えようと思う。…共に来てくれるな?ペルセフォネ、余の妃よ」 握りしめているコレットの手にアローンは唇をおとし、艶然と笑う。 「……はい」 断想しながらも、コレットは頷いて応えた。 . [mokuji] [しおりを挟む] |