血の朱






一面の赤、そして地面に伏したまま、動かないハクレイと傷が深く今にも倒れそうなシオンと傷だらけのユズリハ。


それがテンマと童虎が空間転移をした瞬間に映った光景だった。


「童虎…天馬星座…」


身体に力が入らず、シオンが倒れかける。


「大丈夫か!?シオンよ!」


とっさに童虎が手を伸ばし、シオンを支えた。


「…シジフォスに頼んだ甲斐があった…テンマを見つける事もできたしの!…テンマ?」


童虎の言葉を無視し、テンマはシオン達を殺そうとした張本人、アローンの横を通り抜ける。


「族長…あんたまで…」


膝を折り、テンマはこと切れているハクレイを見下ろす。


「…アローン…お前が殺ったのか!?」


歯を噛み締めて、テンマは声を震わせた。


「………ふっ」


アローンは何も言わない代わりに嘲笑する。


「何が…っ!何が可笑しいんだよこの野郎ー!!」


有りっ丈の声を上げてテンマは背を向けているアローンに向かって走り出し、拳を震った。


だがアローンは一笑し、振り返って右手を突き出す。


青白い閃光が放たれ、テンマは苦悶の声を洩らした。


「テンマ!!」


童虎達が声を上げる。


「天馬星座テンマよ」


アローンの放った力で地面が割れ、破片が飛ぶ。


「お前の言うアローンとは一体誰だ?」


スッと笑みが消し、アローンは冷酷に告げた。


「彼はすでに死んでいるというのに」







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