大佐以上の階級に与えられる執務室。機能優先の机に、壁に敷かれた重厚な軍旗。本棚には各軍小隊ごとの装備や隊員の詳細資料が並べられ、一分の隙もないその仕事場に、不釣り合いな水音が響いていた。

「……ほら、そうじゃないだろ?」

 中央に置かれた執務机の奥に座るのは、西部陸軍十二小隊を束ねる紺野大佐。軍法会議のあった今日は深緑の軍礼装を身にまとい、悠然とした姿勢で椅子に座っていた。
 傍から見れば紺野一人。だが、その大きく場所を取る机の下、紺野大佐の足元に跪くように一人の女性が座っていた。

「……ん、…む…」
「口を開けて、もっと奥まで含んで」

 机の影になるその場所で、彼女は必死に紺野に奉仕していた。くつろげられた中央で、僅かに立ち上がっている肉棒を口に含み、深く吸い上げる。舌先で裏筋を撫ぜるようにし、口をすぼめて先端を食む。
 口の端からは滴が糸を引き、顔を真っ赤にして苦しそうに見上げてくるその姿を見る。そのまま彼女の柔らかい髪を撫で、後頭部を押さえつけるとぐいと自身の下半身に引きよせた。

「……ぐ、ふぐっ、ぐ」

 喉の奥に苦い粘液が押し当てられ、思わず戻しそうになるのをなんとか堪える。歯を立てないよう注意しながら、舌と唇を使いその大きく膨れ上がった怒張をなめ上げていく。
 くちゅ、にちゅ、といやらしい水音が、神聖な執務室にかすかに弾かれていく。その時、コンコン、と扉をたたく音が割入った。


「失礼しまーす。大佐、報告だけいいですかー?」
「新名か。ああ、構わないよ」

 誰かが来た。
 瞬時にそれを察し離れようとするが、外部からの死角で紺野の手が動き、彼女の頭を掴んだままだ。

「えーと、第七小隊で通信部の異動が二名。あと第九小隊で物資陳情が上がってます」
「異動する隊員の資料を後で運んでくれ。物資陳情については別所からも報告を聞いている。火器弾幕については希望通り、嗜好品については却下」

 相対する人物に指示を出しているのだろう、中将の参謀と言われるだけの的確さで、次々と吐き出される言葉を机下で聞きながら、自身の存在を来訪者に悟られぬよう息を詰める。
 だがその努力を無にするかのように、何故か紺野の軍靴が彼女の股の間にのばされた。

「……や…!」

 思わず息を飲むが、紺野の靴はタイトスカート越しに彼女の秘部をぐりぐりと刺激する。口を何とかペニスから解放させてもらうも、今度は声をこらえることに必死になった。今声を上げてしまえば、彼の部下にその存在がばれてしまうだろう。

「あと、遠征に出ていた海軍第三小隊が明日の〇九〇〇当基地に寄港するそうでっす」
「第三か……久々だな」

 机の上では淡々と事務会話が交わされている中、紺野の攻撃は止まらない。
 つま先で器用にスカートをめくり上げ、下着の下の方から上へと無遠慮にこすり上げてくる。たまらず漏れだした愛液が軍靴の先を濡らし、てかてかといやらしい光沢を放っていた。
 その強すぎる刺激の合間にも、彼女は懸命に声を抑える。何とか止めてくれないものか、と長く伸びた紺野の足にすがりつくように体を押し付けるが、器用に足先だけを動かし、その先端がくちゅりとひだを割り開いた。

「……はぅん…!」

 油断したその一瞬、声が漏れた。
 案の定同席していた部下にも届いたらしく、探るような声が聞こえてくる。

「……あのー……いま何か変な声しませんでした?」
「ああ、多分僕の飼っている猫がどこかで鳴いたんだと思うよ」
「いやどー考えても人間……」

 外にまで聞こえそうな心音を抑え、部下が退室するのをひたすらに待ち続ける。やがて軽い靴音が響き、重重しい扉の閉まる音がしたかと思うと、薄暗い机下に一筋の光が落ちた。

「……どこかで泣いていた、ね?」

 強い光を背に受けながら、逆光となった紺野の覗き込んでくる顔が見え、思わず背筋にぞくりとした寒気が走る。ぐちょぐちょに濡れて意味をなさなくなった下着を見、大佐はやれやれと息をついた。

「またおもらしかい? 仕方ない飼い猫だね」
「……ごめん、なさ……」

 涙を浮かべる彼女の顔を一瞥し、眼鏡越しの目を眇める。温和で誰からも慕われる、人望の厚い参謀閣下。だが、彼の大佐という階級こそが、彼がこの笑顔が表わすままの男ではない事を証明していた。

「……躾なおしだね。今晩、僕の寝室に」
「……は、い」

 絶対的な権力の陸軍大佐と絶対的な服従を誓う捕虜上がり。
 これが二人の立ち位置だった。

 





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