さくさくと、積もった雪を踏みしめる音だけが響く。
私の数歩前を歩くコウくんとの距離が切なくて──ただ俯いて、雪地の上に残る大きな足跡の上を歩いた。

『一緒に帰らない?』と誘ったものの、話題も見つからなくて。
海岸沿いの通学路を、無言で二人歩く羽目になった。

せめて、並んで歩ければ良かった。
それなら、コウくんが今、不機嫌なのかつまらなそうなのか、窺えるのに。
表情も見えないから、余計に不安になる。
「あ、あのねっ、コウくん!」
「あ?」
沈黙に堪えきれなくなって名を呼ぶと、コウくんが振り返った瞬間、冷たい海風が吹き付け、思わず肩を竦めた。

チッと舌打ちが聞こえるが早いか、腕を引かれて、背中に庇われる。
「コ、コウくんっ」
「ンだよ?」


──もしかして、海風から庇ってくれるために、前を歩いてくれていたの?


訊いても、きっと否定するから、やめておく。
さっきまでの不安が晴れて、緩む口許が押さえられない。

コウくんの不器用な優しさを、見逃さないように──


「……今週の日曜日、空いてないかな?」


できるだけ、傍にいたい。





(written by:東雲六/*別乾坤*)

12/2のプレゼントは*別乾坤*の東雲六様からの小説です!

コウ兄の優しさとバンビの可愛らしさにときめくばかり…!
不器用なかばい方がたまりません´`*



top


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -