「琉夏くん、おかえり」 たとえば、さっきまで冷たい宇宙をさ迷っていた指先を引っ張られるような感覚。一瞬の眩しさに目を閉じる。そこから少しの勇気を持って再び目を開くと、いつもと変わらない景色が見えた。いつもの俺の家。いつもの時間。いつものオマエの姿。 なのに、なんで? 無性に泣きたくなったんだ。 「あ、ごめんね。勝手に入っちゃって」 家に着いてから一言も話さない俺を不思議に思ったのか、急に焦ったように眉を下げて言った。ああそっか、鍵、渡したんだっけ。 「今日ね、一緒にご飯食べようと思って」 「…作ってくれるの?」 「うん。もうちょっと待っててね」 じわりと目の裏側が熱くなる。単なる日常のわずか一瞬のことなのに、泣きたくなるなんて。 泣きたくなるほど、嬉しいなんて。 たった一言で世界が色づくように、輝きだすように、踊りだすように、歌いだすように。オマエが俺の世界なんだって実感するように。じわりとあったかくなる指先がまた空を舞って、帰る場所を求めた。引き付けられるようにたどり着いたのは、さらりと揺れる髪。 そして細い体を腕の中に閉じ込める。思いっきり深呼吸をして、ぐっと飲み込んだ。 「わっ、る、るかく…!」 びくっと揺れた体が愛しい。愛しい、愛しい。 ねぇオマエはどうしてこんなに幸せをくれるの?オマエのたった一言で俺は、こんなにもあったかいんだよ。おかえりってその一言がどんなに俺を救うか、知らないんだろうね。 「ありがと」 「え?」 「ううん、なんでも。ねぇ、俺お腹減っちゃった。もう食べていい?」 「だめ。それにまだ手洗ってないでしょ」 「ちぇー」 そう言いつつももっと強く抱き着いた。苦しいよ、と声が聞こえたけど、嫌だとは言われてないからいいってことにする。 離したくないな。もしかして、オマエも離されたくないって思ってくれてないかな。俺が「おかえり」のたった一言がこんなに嬉しいように、お前にとっても嬉しくて泣いちゃいそうな言葉、見つけられたらいいな。 魔法のことば (written by:ライコ/眩暈) 12/14のプレゼントは眩暈のライコ様からの小説です! 我らが王子、琉夏×バンビ小説です〜* 物語の中から色彩が溢れてくるようで、とても幸せで切ない気分になれる作品です´`* ふたりとも幸せになれ…! top |