「イルミネーションとかプレゼントとか、女の子って本当にそういうの好きだよな」


冷え切った缶コーヒーを置いて顔を上げると、彼女はひどく悲しそうな表情をしていた。


「なによ、その棘のある言い方」
「別に嫌な意味で言った訳じゃないけどさ。そういうロマンチックなこと、好きだろ?」


好きだけど、と小さく呟いた彼女を見て、僕はまた一言多く言ってしまったことを後悔する。
僕だって彼女と過ごす初めてのクリスマス、楽しみじゃない訳じゃないのに。


「クリスマス…一緒に過ごさないの?」
「え、過ごすだろ?」
「一雪くん、なんだか過ごしたくないみたいだった」
「そんなことないって」


慌てて否定はしたが、確かに人混みは苦手だし、彼女がどういうクリスマスを望んでいるのかもわからない。


「いいよ、私もバイト入れようか迷ってたし」
「なんでそうなるんだよ」
「いいって!私、もうすぐ授業始まるから、またね!」
「あ、ああ」


一人学生フロアに取り残された僕は、ゆっくりと彼女の表情を思い出す。
本気でアルバイトを入れるとは思ってないけど、彼女も僕と同様意地っ張りだから。
どうやって機嫌を取ろうと思いながら、ため息をついた。



僕が悪いことくらいわかってる。けど、素直に謝る気にもなれない。
彼女だって、勝手に勘違いして結論付けて、行ってしまったのだから。


この前一緒に行った本屋で、彼女が立ち読みしていた雑誌を思い出す。
その雑誌に載っていた、クリスマスのデートスポット特集。
彼女があまりにも食い入るように見ていたから、つい声をかけるのを躊躇ってしまったことを思い出した。

とりあえずその雑誌を買って帰ろうと思い、僕は缶コーヒーを持ったまま立ち上がった。




その夜、自分の部屋で買った雑誌を開く。本当は気が重いけど仕方がない。

確かに写真で見てもイルミネーションは綺麗だし、女の子がこういうのを好むのもわかる。
でも、どこも混んでいてすごいんだろうな。わざわざ人を見に行かなくったって─…と思ったところで、これじゃ昼間と同じだと気が付いた。


バイト代を計算して、クリスマスの予算をだいたい決める。
誰もが羨むようなホテルのクリスマスディナーは今の僕じゃ無理だけど、少し背伸びをして、イルミネーションと暖かな雰囲気のあるレストランで乾杯できたら、彼女は喜んでくれるだろうか。

善は急げだ。
もう予約で埋まってしまってるかもしれないけど。



携帯電話を取り出して、雑誌に書かれてる番号をプッシュする。


「もしもし、あの、予約お願いしたいんですけど。はい、今月の24日で。時間は…19時くらいがいいんですけど、空いてますか?」



聖なる夜くらい、ずっと笑っていられたら、なんて。
彼女の笑顔と素直な気持ちが、最高のプレゼントだから。







(written by:あい/ぐみ)

12/8のプレゼントはぐみのあい様からの小説です!

素敵な赤城×デイジー小説を頂きましたので、赤城くんのお誕生日にご紹介です〜*
この二人はケンカップルというか素直じゃない感じがたまらなく可愛いですよね´`* 隠しキャラでありながら赤城くん人気が高いのも頷けます…!



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