>> 酷く眠たい夜の話




 うすらと瞼を押し上げる。
 薄暗い照明、統一された家具のその部屋は広く、だがどこか異質な空気に包まれていた。

「……?」

 体を起こし、周囲を見渡す。キングサイズのベッドには白いシーツが斜線を走らせており、天井より下に豪奢な天蓋が見えた。奥には液晶テレビとテーブルと、別室もあるようだが暗くてよく分からない。ホテルの一室だろうか?
 更に奇妙なことに彼女は服を着ておらず、上下の下着を身につけているだけだった。薄ピンクに薄手の生地、白いフリルの蓄えられたそれは、彼女が買った覚えがないものだ。

「目、覚めた?」

 聞き慣れた声を振り返る。案の定、幼馴染の桜井琉夏がその端正な顔を傾げるようにして暗闇から姿を現した。それを契機に隣には同じく幼馴染の琥一の姿。更には同級生の不二山に後輩の新名、先輩にあたる二人までもがその場にいたことにようやく気付いた。
 皆平然とした様子をしているが、どこか、おかしい。言いようのない不安が心を軋ませたが、それに気付かないふりをして問い直した。

「琉夏くん? みんなも……ねえ、ここ……」
「気付いちゃったんだ、俺たち」

 え、と一瞬ひるんだ様子の彼女に琥珀の目を向け、ゆっくりと微笑む。そのままぎしりと音を立ててベッドに膝をついた。

「俺たちさ、みんなお前が好きなんだ」
「……琉、夏く」
「でも、お前はみんなが好き。だろ?」
「……!」

 誰かを、と願ったことは無かった。
 今はとにかく勉強と部活が楽しくて、休みの日も放課後もそればかりしていた。入学当初は悲惨だった成績も大迫先生のフォローもあってか少しずつ伸び始め、気付けば上位グループの仲間入りを果たしていた。またカレンに付き合わされているうち自然と自分に似合う服を選べるようになり、身だしなみに気を付けるようにもなった。
 目に見えて変わっていく彼女が、男子の間で噂になるのに時間はかからなかった。気付けば誰ともなく休日に誘われるようになり、断ったり暇であれば行ったりといった記憶はある。
 誰にでも優しくて、誰にでも平等。そんな彼女の行動は実に残酷で、積み重ねられた傷は大きな発火剤を生んだ。それも一人ではない。彼女を慕う、全ての男の心に。

「誤解だよ、私、……」
「『そんなつもりじゃなかった』……とか?」

 手を伸ばし、彼女の髪をすくい上げるように頬に触れる。向けられる視線は悲しみと僅かな狂喜を孕んでおり、ぞくりと自身の背が震えたのが分かった。だめだ。逃げなければ。
 だがそんな彼女の恐れに気付いたのか、琉夏は静かに目を眇めた。

「うん。知ってる」
「……」
「でももう、限界なんだ。俺たち」

 だから、選んで――と囁くように口づけられる。

「――お前を一番気持ちよくさせた奴、ね?」

 琉夏の言葉の意味を反芻する。どこかで、小さな破裂音が幾つも聞こえた気がした。




「ねー、誰から?」

 琉夏の無邪気な声に、隣立つ低い声が応えた。

「チッ……しゃーねえなあ」
「別にコウじゃなくてもいいけど?」
「うるせ。俺が出ねーとお前好き勝手するだろーが」
「ばれた?」

 普段と同様、軽妙な喧嘩を繰り広げながらも二人は制服を脱ぎ、その衣服をベッドの下に落としていく。彼女がにじりと枕側に身を引くと、逃さないとばかりに琥一が足首を掴んだ。

「……ほんとはよ、もっとマシな形でケリつけたかったんだがな」
「コウ君、お願い、……」
「――ワリぃ」

 懇願虚しく片足を引かれ、バランスを崩したように二人の眼前に晒される。琥一が彼女の足を捉えて拘束する合間に、琉夏が背後にまわりその体を抱き寄せるように支えた。そのまま下着越しに乳房をすくわれる。

「ひゃっ!」

 長く節くれた指が零れそうなそれを掴み、ゆっすりと揉み上げると、次第に下着から露出する肌が増えていく。それと同時に琥一の指がクロッチ部分に伸び、す、と縦筋をなぞった。反射的に足を閉じるが、既にその筋肉質な腕は足の合間に挟まれており、更に布越しにそこをめり込ませた。
 日に焼けた長い指が上下に動くたび、柔らかい生地が中に食い込み、入口を刺激する。それに合わせてうすらと染みが広がり、その部分だけが丸く色を変えた。

「やっ、やだっ、そこ……!」
「……クッ、もう濡れてんぞ」

 琉夏が体を屈めて耳を食むように口づける。それと同時に琥一がぐいと体を彼女の方に寄せ、もう一方の耳元に荒い息を落とした。双方の耳にそれぞれ違った熱い息がかかり、鍛えられた肉体に挟まれて身動きが取れなくなる。
 だがそんな様子を見越してか、琥一は指先でクロッチを右にずらすと性器を露出させる。ひとしきり胸を堪能していた琉夏もそれに気付き、琥一に向けて笑った。

「コウ、それならさ……」
「アア、そーだったな。――セイちゃんよ、いんだろ?」
「……なんだよ」

 突然呼ばれ、不満そうにしていた設楽が、やれやれといったようにベッドに上がって来た。祈るような気持ちで見るが、やはり彼ら同様服を脱いでおり、助けてくれる様子はなさそうだ。
 彼女を挟んで楽しんでいた桜井兄弟であったが、設楽の登場でまず琥一が体をずらす。そして彼女の隣に座ると、その両腕を伸ばし彼女の膝を割ると大きく開かせた。当然のように大陰唇がばくりと口を開き、その中のふちが布に触れる。かなり恥ずかしい体勢にされてしまい、必死に閉じようとするが琥一の力は強く、また琉夏がひたすらにおっぱいを愛撫しながら、首筋に口づけるのでそちらに意識を取られてしまう。

「オラよ、広げといてやるからよ」
「コウくん、何して、……設楽、先輩も、……ねえ、」

 次に訪れる事を想像し、信じられないというように笑う。だか彼女の願いもむなしく、設楽はその開かれた足の合間に顔を埋めた。

「――はっぁッ……!」

 親指の腹で最後の覆いをずらし、下から現れた秘裂に舌を伸ばす。思わず腰を引くが、琥一の手が内腿にまで降りて来て、強く掴まれてしまった。逃げ場のない状態のまま、設楽の柔らかい髪が腿の付け根をくすぐり、明らかに温度の違うそれが触手のように中をうごめいていた。ねぶるように、時折漏れる息に設楽の声を聞き取りながらも、ただ足を開いてされるがまま。ちゅく、といういやらしい音だけが自分のそこから聞こえていくのが恥ずかしくてたまらない。
 上側を、下側を。最奥のじんじんとする場所に届かぬ刺激が入り口部分ばかりを舐め上げていく。平たい舌の部分でじゅる、と啜られ、尖らせた舌先で膨れ上がった突起を舐められると、その生温かさに一瞬弛緩した。

「あ……、あ、……」

 その様子に満足したのかようやく設楽は秘部から口を放し、僅かに顔を上向かせる。その整った顔立ちの口元はてらてらと光っており、今しがた行われた行為を再認識するようだった。思わず眼を背ける。すると今まで背後で黙っていた琉夏がブラのふちに手をかけ、勢いよく引き下ろした。

「セイちゃん、ほら」
「やっ、琉夏くんやめて、っ――あああっ!」
「なっ、バカ、お前……!」
「……ッ」

 既に屹立していた乳首をひっかけつつ、ぶるんと白い双丘が露見する。その光景に顔を上げていた設楽はつられて赤面。琥一は流石に慣れたものだったが、白く濡れたような肌にピンク色の硬い尖りに、思わず嚥下した。
 剥き出しになった乳房に、今度は直に触れた琉夏の指がやわやわといやらしく動く。背後から伸びる手にそれはいいように変形し、次いで乳首の根元に親指と人差し指を添えると、きゅ、と軽く引っ張って見せた。敏感になっている体に新たな刺激が走る。

「ひゃん、あっ、琉夏くんやぁっ、……!」
「セイちゃんに見られて感じてる? ほら、コウも見てるよ。ヤラシー」
「……テメエばっか調子乗ってんじゃねえ」

 なおもくりくりと先端を刺激する琉夏と、目の前に剥きだされたおっぱいの衝撃に興奮したのか、再び陰部への奉仕を始めた設楽をよそに、琥一が立ち上がり露出された性器を彼女の頬にあてた。既に熱く立ち上がったそれが、ぶるんと口元へと滑らされる。

「あー……その、出来るか?」
「……ん、」

 行動に対して控え目な言い方に気付いたのかいないのか、朦朧とする意識の中彼女は既に我慢汁を零す亀頭を口に含んだ。ぬるぬるとしたそこを舐めていると、琥一の手が後頭部に添えられ、さらに竿部分まで咥えさせられる。

「あ、それずるい。じゃ、俺も」

 そう言うと今度は琉夏が僅かに腰を浮かせ、一緒に彼女の腰を持ち上げた。設楽も一旦舌を放し、まるで示し合わせたかのように体の向きを変え、彼女の下に腰を据える。持ち上げられた腰が降りる先には、設楽の立ち上がったペニスが。
 口を塞がれ、くぐもった声で抗議して見せるが、琉夏はゆっくりと二人を結合させていく。

「んーぅ! んーッ!」
「……ばっ琉夏、お前、ちょっ……」

 にっちょ、と温度の違うそれが繋がりあい、気の抜けた空気音を漏らしながらしずしずと隙間を埋めていく。やがてほぼ埋まり切ったタイミングで今度は琉夏の性器が後ろの穴に頭を寄せていた。
 異物感を露わにしながら滾る剛直が侵入してくる。みりみりと引き裂かれるような痛みをこらえると、傘の終わった直後ずるりと熱い肉棒が排泄道をにゅるりとうねった。

「ふあっ、……ああっ……!」

 三方向から掛けられる負荷で、手のやり場に困り目の前にある琥一の腰に縋るように手を伸ばす。自然と自ら口淫を望むかのような体勢になり、琥一は興奮したように腰を前後させた。口の中に独特の匂いが溢れ、張り巡らされた血管の感じに下腹が疼く。すると琉夏が尻から細い腰を撫でるように手を上下させ、そのたびにぞくりとした快感が体を襲った。背後から抜き差しされるその衝撃で、体が前へと傾ぎ、下にいる設楽は制止するように彼女の太ももを掴んでいる。
 やがて堪え切れなくなったのか、設楽が腰を打ちつけるように上下させ、合わせて彼女の体が揺れる。すると琉夏も負けじと抜いた肉棒を突きたて、バラバラのタイミングで前に後ろにゆさゆさと彼女を責めたてていた。その間も琥一の剛直は口の中で暴れまわり、僅かに出たどろりとした液体を彼女は息ぐるしさから懸命に飲みこんだ。同時に設楽が腰を高く穿ったかと思うと精を吐露し、最後まで琉夏が彼女の肩と腰を抱きしめるように腰を打ちつけていたが、彼女が囁くような息を零すに合わせて、濡れたペニスを抜いた。

「あっ……は、あっ……」

 精液の飛び散ったシーツに転がされ、うつろな目で必死に呼吸を繰り返す彼女。三人の男もとりあえずは満足したのか、大きく息を吐きながら、それぞれ彼女に軽く口づけを落としていく。
 だが悲劇はまだ終わっていなかった。



「あーもー琉夏さんたちばっかズルいですってー」

 彼女を休ませようと三人が離れたその隙に今度は後輩の新名が苦笑いしながらベッドに参戦する。人数の増えたそれが軋み揺れるが、更に二人の重さが寝台に追加された。

「新名。慌てんな」
「やれやれ……やっぱり僕も行くのか……」

 見れば不二山と紺野が普段と変わりない様子で彼女の傍に体を寄せていた。その気配に気づいたのか、横たわっていた彼女の目に光が戻る。だが、先程の一件からか明らかな怯えが見え隠れしていた。
 それに気付いたのだろうか、紺野が彼女の頬に手を伸ばし、そっと撫でた。大きな手が柔らかい髪をくすぐる。

「大丈夫かい? 設楽のやつ、随分無理をさせたみたいだけど……」

 穏やかな声色にほっとする。良かった、紺野先輩はいつもの紺野先輩だ。

「だい、じょうぶです、」
「そうか。良かった」

 心底ほっとしたような声で紺野が微笑む。しかしその直後、感情を押し殺したように低く囁いた。

「まだ君には――頑張ってもらわないとね」

 え、と聞き返す間もなく横から口づけられ、同時に胸を掴まれる。んー! と必死に抵抗するが、舌で咥内を犯され頭の中が真っ白になった。時を同じくして足元にいた嵐が、山形に立てられた彼女の膝を割り開くように掴み、大きく開かせる。二人分の精液がどろりと零れシーツを黒く染め上げた。
 まだ胎内に残っていたのだろう。不二山はなおもこぷんと涎を垂らすそこに指を伸ばし、中指を突き入れた。一度達した刺激からすぐに体は反応するが、不二山の無骨な指は更に奥へとのびていく。

「あ、嵐くん、やめっ……!」

 秘部を全開にされ、そこを見られているというだけで恥ずかしいのに、彼女のそこはなおもおもらしをするかの様にずるずると液体を零している。それらを掻き出すかのように不二山の指は奥をなぞり、そのままぐちゅん、ぐにゅ、と柔らかい内壁を撫ぜられた。ちゅく、という淫靡な水音にくわえ、締め付ける度彼の長い指が入っていることがはっきりとわかり、知らず興奮してしまう。
 一方紺野は唇から離れ、右の乳首に子どものように吸いついていた。ちゅば、というリップ音に合わせて突起が吸いつけられ、唇から漏れる熱い息に体が反応する。かと思えばもう一方の乳房に、横にいた新名が触れた。

「ちょっ、みんな早いっスよ! こういうのは優しくやんないと〜」

 言いながらその大きな手で胸の下側、谷間、そして先端にと揉みこんでいく。彼の体温が高いのだろうか、じわりと感じる手の熱が肌になじみ、くすぐったい。すぐにピンク色のそこに二本の指が伸び、親指の腹で擦るように刺激を与えられると、彼女の腰が突然びくりと浮いた。

「おい新名、あんま脅かすな」
「いやっ、こんな反応いいと思ってなかったんスよ!」
「悪い。大丈夫か」
「う、うん……」

 そっか、と言いながら不二山は愛撫を再開する。気付けば指は二本に増やされ、圧迫感を増していた。怒られた新名も行為に意識を戻し、なおも乳首を親指でこりこりと刺激する。そして紺野同様チュ、とそこに口づけながら口に含んだ。薄い唇に挟まれ、奥から伸びる舌先がちろちろと窪みを舐める。彼女の左側に体を下ろした新名は、そっと彼女の頭を抱きしめるように腕をまわした。
 対して紺野は右側の胸を。腕は腰を抱き寄せるように伸ばしており、体の中心を境に、右と左違う人間からそれぞれ違う愛撫を受けることとなった。  
 
「あっ、はぁ、……ん、」

 新名は彼女がどうしたら気持ち良くなるかを追求するかのように、丁寧に手の平で揉みしだいてくる。対する紺野は舌で先端から下乳と執着するように舐めて来ては、湿り気のあるやわい感触が半身をぞくぞくとせり上がる。
 互い違いに与えられる刺激。二本の腕と二人分の舌が全身に絡みつき、その良いように弄ばれる感覚が恥ずかしいやら心地よいやらで、必死に上がりそうになる声を抑えた。
 だが、上半身の愛撫だけに集中していた意識が今度は下半身にいた不二山に持っていかれる。入れられていた二本の指をひねる様に開き、秘裂をこじ開ける。そこに待つ間もなく亀頭を押し付けられたかと思うと、設楽のを受け入れたその口で今度は不二山のそれに食いついた。

「や、嵐くん、やだ、それ、やだぁっ……!」
「設楽さんはよくて、俺はダメなんか?」

 ごり、と性急に押しいれられ、張り出した傘を襞が包み込む。続けざまに根元までが入ってきたかと思うと、大きく開かされた太ももの付け根を掴んで引っ張られた。下腹部の中心が不二山のペニスの形を明確に写し取り、脈打つ血管すら胎内に伝わる。先程犯された設楽のそれより奥には当たらないが、代わりに押し広げられる快感が半端ない。と、そんな違いが分かる自分にも赤面した。
 下からは不二山の太い怒張が上に下にとずちゅずちゅと内壁を擦りあげ、ギシギシとベッドを軋ませる。一方でその跳ねる体を抱きしめるように紺野と新名がそれぞれ胸を鷲づかむように揉んだり、人差し指と中指で突起をつまんだりと、翻弄してくる。挙句二人の性器も既に屹立しており、腰の左右に熱い高ぶりを感じた。

「ヤバ、ちょっと、止まんない、かも……」
「はあ、……僕も、きついな……」

 先端からにじみ出る透明な液が彼女の肌に塗りつけられ、がくがくと腰を動かしては急な角度のそれを彼女の腰や横腹に擦りつけてくる。腕や体とは全く違う体温と、言いようのない固柔らかさ、そしてぬらぬらと残る粘液の感じが左右それぞれにこびりつき、まるで三人から性器を犯されているかのような感覚を覚えた。
 全身を這いまわる六本の腕に三本の肉棒。そのあまりに逃げ場のない状況に、ただ涙と喘ぎを零すしかなかった。

「もう、やあ……ぁ、……ひぁ……」
「すげ……チョーやらしいんですけど……」
「っはぁ、……悪い、俺そろそろ無理だ」

 ん、と苦しげな声を上げたかと思うと不二山は彼女のナカに大量の精液を吐きだした。ぶわりと下腹に暖かさがにじみ、収まりきれなかった白濁が結合部からこぽこぽと零れる。更に何度か軽く突くとそれらはシーツに飛び散った。それに煽られたのか、今度は右下側にいた紺野が精を吐露し、彼女の白い腹にぶちまける。白と透明の混ざったような筋が太ももから体の横へと引かれ、紺野は荒々しく息を吐き出すとゆっくりと体を起こした。
 最後に新名が僅かに先端から精子を零したかと思うと、浮かした腰から飛んで彼女のおっぱいへぺちゃと付着した。一拍置いて残りの滴が漏れだし、みぞおちからピンク色の乳首の上にまで、転々とどろどろのそれらが飛び散る。
 慌てて拭き取ろうと新名が体を起こす、が、固く尖った乳頭や彼女の全身にかかる白濁はコンデンスミルクのかかった苺のそれの様で、更には潤んだ瞳で儚げに息をする彼女に匂い立つ色気を感じ取った男たちは、再び自身の劣情を奮い立たせてしまった。


「ねー。もうみんなでやっちゃう?」

 琉夏の呟きに返事は無かった。だが、その場にいる彼女以外の誰もが同意をしたように見えた。
 既に抵抗する力を失った彼女を琉夏が後ろから抱え上げ、仰向けに横たわっていた琥一に「はい」と笑顔を向けた。琥一もなにも言わずにそれを受け入れ、覆いかぶさらされる彼女の腰を掴むと、固くなっていた自身に合わせ、ゆっくりと降ろさせた。足を開いてすぐ、不二山の残滓が数滴零れおちるが、構わず全体を彼女の中に突き入れる。
 下からの違和感に気付いたのか、疲れた目の彼女がふと意識を戻す。だが、既に琥一が体の奥に挟まっており、焦ったように体を起こした。だが琥一の腕が彼女をがっちりと捕らえて放さない。

「コウくん、お願い、もう、許して……」
「……悪ィ、文句なら後からいくらでも聞いてやるからよ」
「……んっ……!」

 騎乗位のまま軽く突き上げられる。がくんと彼女の小さな体が傾ぎ、不釣り合いに大きい乳房が揺れる。思わず体を前に倒したその折を見計らってか、背後に違う気配を感じた。

「ごめん……君に無理させたくはないんだけど……」

 先程達したのが半端だったのか、紺野が腹にくっつきそうなほど立ちあげたそれを手にすると、彼女の後孔に先端をあてた。琉夏から既に開かされたせいか、狭いそこはすんなりと入口を受け入れ、ぷす、と空気の抜ける音と共に太くて長い剛直が直腸を滑る。精液が潤滑油になっているのだろうが、じゅるじゅると滑る熱いそれの感覚はやはり不思議で、背中をそらした。琥一の手が腰に置かれ、紺野の手がその上、横腹を支えるように撫でてくる。

「はう、あ、あぅ、せんぱ、やめて、やめてくださぃ……っ!」

 下からと後ろからと。彼女の中数センチで肉薄する凶暴な二本が、むちむちと内壁と性感帯とを刺激してくる。おまけに二人ともかなりの長身のためか、小柄な彼女はその胸板に挟まれて、なすすべなく蹂躙されていた。
 そんな中、頼るものなく降ろされていた彼女の手を互い違いに取られる。騎士が姫の手に口づけるかのように捧げ持たれた手の甲。懸命に視線を上げると、右手には設楽が、もう一方には不二山の姿があった。

「したら、ぁ、せんぱい……? あらしく……」

 助けて、とそれぞれに目で懇願する。それに気付いたのか二人はふ、と目を眇めると彼女の手をそっと張り出した自身のペニスに導いた。白い指が彼らのそれに触れたかと思うと、恐る恐る確かめる。緩やかな曲線を描くそれは他のどの部分より熱く、べとべととした手触りで手にまとわりついた。
 
「これ、抜けるか?」

 不二山の言葉に、そっと裏筋を撫でる。何度か前後に手を動かすと更に固くなり、ついさっきまで自分の性器に入っていたことを思い出しては改めて困惑する。一方の設楽にも愛撫を開始し、射精後の残る亀頭の割れ目に親指の腹を添えると、くり、とこすった。その瞬間面白いように設楽のそれが反応し、頭上からも堪えるような声が漏れる。その反応が少し新鮮で、更にそっと握る様に手で包み込んだ。
 彼女の中を犯した凶器。それを改めて手でしごくというのは奇妙なもので、自分の中にこんな大きなものが入っていたのかと自覚させられるかのようだ。事実、不二山のそれは痛いほどに開かれただけ太く、隆々とした血管が張り巡らされていた。逆に設楽の方は奥深くまで突かれた感覚を思い出し、その先端を丁寧に撫でては手の平がべたべたになるのも構わず全体に精液を塗り広げてやる。

「……ッ、バカ、手加減しろ…!」
「……っ、……あ、…すげーいい。お前、上手いよな」

 対照的ながら、ちらと顔を見るとどちらも顔を赤くし感じているのが分かった。相変わらず性器への圧迫感は二人分残ったままだが、中の柔らかさを堪能しているのか下の二人もゆっくりと腰を動かすだけだ。
 だがほっとしたのも束の間、空気を求めて上げた顔に、ぺちょ、と高ぶった肉棒が触れた。頬に押し付けられたそれは独特の匂いを持っており、その持ち主はそのグロテスクなものとそぐわない綺麗な顔で微笑んでいた。

「なんか余裕っぽいね? じゃ、俺のもシて?」

 設楽の奥から体を割り込ませると、彼女の薄く開いた唇にペニスを触れさせた。一旦どこかで綺麗にしたのか、苦味はなかった。だが透明な先走りが再び零れおちており、恐々とすぼめた口で咥える。最初は普通だったそれがやがて口の中を圧迫し、舌を懸命に動かしては雁を舐める。だがなおも琉夏のそれは大きくなり、上あごにじわりと苦みが走った。苦しくなりたまらず口を放して息継ぎする。すると、反対側から同じくペニスが眼前に晒された。

「なんつーか、……ヤバイ。アンタ、マジでやらしい」

 普段であればこんな無理を彼女にさせようと思わなかっただろう。だが複数という特殊な状況下において、聡明な新名の判断も鈍り始めていたのか。
 閉じた口に口づけするようにペニスの先端を押しつける。ちゅ、と高い音が響き、放したと思うと新名の手が彼女の顎に伸びた。指先でそっと口を開かせると舌を同じく指で撫で、大きく開いたその口に自身をゆっくりと入れる。

「ん、……ふぅ……」

 両手は設楽と不二山のそれを握り続け、口には新名の剛直。ゆるりと勃起しているそれを必死にねぶると、子どもを褒めるかのようにそっと頭を撫でられる。朦朧とする意識のなかそれが嬉しくて、更に成長するそれをんぐんぐと食む。
 あ、……という新名のため息にも似たそれを聞きながら、懸命に口を前後させていると、相手にされないことを不満に思ったのか琉夏が屹立したままの自身を彼女の頬に押し付けてきた。

「ねー。俺のは?」
「ちょ、琉夏さん、今は俺が――」
「ん、……」

 ちゅる、と口の端に涎を残しながら、求められるまま琉夏の怒張を飲みこむ。えーと不満げな新名から、主導権は彼に移動し、彼女の髪の間に琉夏の長い指が差し込まれた。髪から耳へ、頭全体を固定されるように掴まれると、ゆっくりと抜き差しされてしまう。
 長いそれは喉の奥にまで届き、思わずえづきそうになるのを必死に堪える。だがそんな彼女を見つめ、琉夏は楽しそうに問いかけた。

「コウのより、おいしい?」
「テメー、……何言ってやがる」

 反射的に体の下から声が上がる。対抗するかのように琥一が強く体を突き上げると、連鎖的に他の部分にも刺激が走った。
 
「ん、んんぅ、ふぅんん、」
「――ッ、はあ」

 体の下には鍛え上げられた体躯の琥一。背後には荒々しく息を吐きながら、体を抱きしめてくる紺野が。大柄な二人にバラバラに突きたてられては犯され、彼女の性器はもはやぐちょぐちょに蕩けていた。どちらがどちらまでの境かも分からず、ただ滾る熱さのそれが下腹部の奥の奥をかき混ぜ、よだれを垂れ流す。
 だが体を起こすと、四人の男が周囲を囲み、その両手は形の違うペニスを掴まされていた。彼女の小さな手にはあまるほどのそれを一生懸命扱く合間に、口には琉夏のそれ。裏筋に亀頭にと舐め取っていると左頬に熱い高ぶりが触れ、それを合図に今度は新名のを咥えこんでやる。
 
「ん……出る」
「あ、らしさん、早……」
「……お前も、限界だろ」
「ハァ、アア、僕、僕も、だす、よ……」
「っ、紺野、だらしない、ぞ…!」
「――クソッ」

 一人の華奢な少女相手に、男が六人。それは異常にも見える光景で、既に全員が言いようのない色気の熱と、間もなく訪れる絶頂を感じて、最後の追い上げを開始した。琥一が強く突き上げると紺野も負けじと彼女を抱きしめ、びょると射精する。その飽和感に彼女が短く悲鳴を上げると、口の中にいた新名も合わせて精を吐きだした。紺野から零れた精が琥一の性器に伝い、そのぞくりとした刺激に琥一も彼女の中に思いの丈をぶちまける。きゅん、きゅん、と締まる子宮口が琥一のペニスを激しく絞りあげ、自由になった彼女の口から「許して、ゆるして、くださいッ…」とか細い嘆願が漏れる。だが琉夏はその言葉を押しとどめるように自身を押し込み、幾度かピストンすると彼女の中に白濁を放った。彼女の顔、鎖骨、腕にもう誰のものかすらわからない精液が飛び散り、そのすさまじい光景に設楽が吐露する。一拍置いて不二山も吐精し、勢いよく飛び出た白濁が彼女の顔に降り注いだ。
 ずるり、と弛緩し倒れこむ彼女から、誰ともなく性器を抜く。ようやく全員から解放された彼女はベッドの上に投げだされていた。その全身は白く粘性の高い液体にまみれており、なおもうつろな目で見えない誰かに謝り続ける彼女に、琉夏がそっと口づけた。

「だから、――爆弾には気を付けよう、ね?」










「……おはよ」
「……オウ」

 westbeachの朝。珍しく早起きな琉夏を見やると、琥一は無言で準備した朝食を目で指し示した。

「コウ、早いね」
「――夢見が悪かったンだよ」
「そっか。……実は俺も」
「……」

 昨日の残りが挟まれたサンドイッチにかぶりつくと、二人無言で朝食をとる。ざくざくという野菜の音だけが響く中、先に食べ終えた琉夏がぽつりとつぶやいた。

「サイドイッチってさ、やらしいよね」
「馬鹿かお前」






「っはよーございまーす!」
「新名か。早いな」

 早朝の柔道部室。普段なら不二山だけしかいないはずの朝練に、珍しく新名が顔を出していた。

「いやーその、なんて言うか、早く目がさめちゃって?」
「そうか。お前も体が出来てきたんかもな」
「いや、……それとはちょーっと違うような、って、そんなことより――」
「マネージャーなら来てないぞ」

 ええー! と新名の声が上がる。

「ちぇー ……なんつーか、あんなの見た後だからか、早く会いたかったのになー」
「残念だったな」
「……てか嵐さん、何で俺が聞こうとしたこと分かったんスか」
「……」

 いくぞ! と新名の問いに答えぬままランニングに出てしまった不二山を見、新名は「ちょっ嵐さん、待って下さいよー!」慌てて更衣室へと飛び込んだ。






「……設楽、おはよう」
「なんだ、珍しいな」

 間もなく朝のホームルームが始まる教室内。普段なら設楽が来るより前にいるはずの紺野が、珍しく時間ぎりぎりに来たことに、設楽は首を傾げた。

「ちょっと変な夢を見てね……」
「なんだ、お前もか」
「設楽もかい? 一体どんな――」

 言いかけて、二人押し黙る。何とも言えない微妙な空気になったまま、担任が廊下にいる生徒に声をかけながら入ってきたのを契機に、その話は自然と立ち消えととなった。






「バンビおっはよー!」
「おはよ、バンビ」

 おはよー、とキューティー3の三人が集い、昨日見たテレビやら朝の占いやらの話で盛り上がる。その時、宇賀神が何かを思い出したかのように呟いた。

「そうだ、バンビ。気を付けて、陰で傷ついている人がいるかもしれないって、星が導いてる」
「傷ついてる? やだ、それってバンビをどこかの男が狙ってるかもしれないってこと!?」
「分からない……でも、今は小さな傷でも、いつか大きな爆弾になるかもしれない。だから、気を付けてね」

 だが当の彼女はきょとんとしたまま笑っていた。

「ありがとう。でも私、そんなモテないし、大丈夫だよ。好きな人とか、も、い、いないし……」
「もー! バンビってば危機感なさすぎ!」
「こらぁー! ホームルーム始めるぞー!」

 大迫の声に驚いたのか、宇賀神は慌てて自分の席に戻っていく。カレンもチャオ、と手を振りながら離れ、残された彼女は教壇に立つ大迫の姿をみては、嬉しそうに笑った。

「どうした、先生の顔に何か付いてるかあ?」
「あっ、ち、違うんです、何でもないです!」

 突然大迫の視線が自分の方へ向き、思わず赤面する。そんな彼女の様子に気付くでもなく、大迫は持っていた出席簿を開くと一人ひとりの名前を呼び始めた。それは普段と何も変わらない、いつもの朝のお話。

 無邪気で残酷な彼女が自分の気持ちに気付くのは、一体いつになるのだろう。
 そしてその執行猶予はいつまでなのだろう。


(了) 


2018.12.29(執筆2012.01.30)

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未公開原稿のラスト、以前発行したweb再録「オールオール。」用に書き下ろした7ぴ(以下不適切な表現のため自粛)でした!

書きながら図を描いたのはこれが最初で最後だよ!(図とは…)


本を買ってくださった方のために、と思って書いたものですが、再販予定もなく入手も不可能で6年経っているから許してください…! といった次第です(´・ω・`)

本を知らない、手に入れられなかった、という方にお読みいただけると幸いです〜*

 

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