灰色歌姫 | ナノ


  










「復活…?左腕を取り戻すことが出来るんですか……!?」
「ああ」
「ホントに…っ!?」
「とりあえずここは冷えるから…」




アレンの顔が急に輝き、気分を良くしたのかバクはキラキラとした笑顔で言いかけた時、


「あ――ーっ!!!見つけたぞテメェ!!」


フォーの怒鳴り声が響き、振り返る。


「何勝手に病室抜け出してやがる!!」
『…アレンっ』


そして理不尽な飛び蹴りがバクに直撃した。
勢いで扉にぶつかり跳ね返る。

これ以上タイミングを逃してたら本当に声を掛けられなくなると思い半ば飛びつくように抱き着いた。



「アンジュ!?」
「エクソシストだろうがアジア支部にいる以上勝手な行動は慎みな!大体テメェ起きたんならまずあたしに挨拶だろ!あたしはお前らを竹林からここまで運んでやったんだぜ!」




抱き着いた腕を放さないまま顔だけ振り返る。


「オレ様を蹴飛ばす意味がわからんぞ!」
「ホラ、テメェ挨拶しろよ」


一人称が変わったバクを見事に無視したフォーがこちら、アレンを指さす。
無視されたことにまた怒り出したバクを現れた男が宥める。
勢いに飲まれたアレンが戸惑いながらも口を開く


「たっ、助けてくれてありがとうございました。えっと…?」
「フォーです。彼女の名前はフォー。このアジア支部の番人です。
私はバク様の補佐役のウォンにございます。お二人ともお元気になられて本当によかった」




優しい男性、ウォンの言葉と声にアレンは少し下を向いて笑った。
ぎゅ、と右腕だけが腰に回される。


「ありがとうございます。僕たちを助けてくれて、本当に…ありがとう」
『…改めて、お礼を…ありがとうございます、皆さん』





***





「えっ、地下なんですか、ここ!?」
『!?』



アレンの包帯を取り換え終わり、アレンも服を着替えたところである場所へと向かっていた。


「昔ただの洞窟から先人たちが掘り進めて造られた巨大な隠れ聖堂なんです。今現在も拡大していて総面積は本部よりもありますよ」
「迷わないよう気をつけろよ、ウォーカー、アンジュ。昔二週間迷子になって餓死しかけたやつとかいるから」

「えっウソ」



迷子のプロ基アレンがぞっと顔を青くする中、不自然にバクとウォンが静まり返り、ああなるほどと納得する。



「おしゃべりを止めにして入りたまえ!」




バクが開いた扉の中。
入るとそこはぼあ、と霧状の何かが広がる部屋だった。
天井がやけに高い。



「この部屋は…!?煙…じゃない、なんですか、これ?霧!?」
「これがキミの左腕だったイノセンスだよ」





バクが告げた事実にアレンが驚き慌てる。


「ええっ!!?この霧が?」
「霧ではない。形を失くし粒子化しているんだ」



部屋中を漂うそれをみて呆然とする。
こんな姿になってまでアレンのイノセンスは存在しているのか、と。


「通常、粒子になるまで破壊されればイノセンスであっても消滅する。アンジュの装備型イノセンスがそうだったように。だがこのイノセンスは消滅しなかった。それどころかキミを助け、今もなお神の結晶としての力を失わずにいる」

「アンジュ、キミ、イノセンスが…!?」
『…うん。でも平気。これがまだ残ってるから』



そう言って笑いながら首を触ればアレンが複雑そうな顔をした。




「こんな状態になっても生きてたなんて…どうして僕のイノセンスだけ…?」
「残念ながら我々の科学じゃそこまでわからない。コムイですらこの事は予想の範疇をこえていたらしい。珍しくあの男が非科学的な事を言っていたよ」






あの子は、アレン・ウォーカーは特別なのかもしれない。神に愛された存在なのかも――ーと。









 







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