「アクマが来る」
船の帆の上から海を見渡していたアレンが叫んだ。
彼の声に反応して乗組員が海側の空を見上げる。
「なんて数なの!!!」
青い空を覆いつくす程のアクマの大群。
そのほとんどのアクマがレベル2へと進化していた。
「オレらの足止めか!?」
「迎撃用意、総員武器を持て!」
此方へと向かってくるアクマの大群へと5人すべてイノセンスを発動して迎撃するが、どうもおかしい。
その違和感に全員が気付いた。
「何やってんだこいつら…」
『船を通り越していく…?』
「どうして…」
アクマたちは私達には見向きもせずに船の上を通過し、中国国内へと侵入していく。
「うあっ」
『アレン!!!』
通り過ぎていくアクマの内一体が、アレンの足を掴み、空へと飛び去って行ってしまう。
咄嗟に伸ばした手がわずかに届かずに奥歯を噛む。
「アレン!!伸…」
「エクソシストがいるぞ!」
ラビもアレンを追おうとし、鉄槌を構えた時、背後にアクマが現れ断念する。
彼の背後に現れたアクマを鉄扇で破壊し、空を見上げる。
「アンジュ、ここはオレらに任すさ!お前はアレンを!!」
『…うん、ありがとう!お願い!!』
アクマに連れ去られたアレンを追いかけ、船を飛び降りる。
装備型イノセンスの能力で足に風を纏い、走るスピードを上げる。
きっとアクマたちが向かう先にアレンもいるはずだと考え、空を飛ぶアクマの行く先へと走る。
竹林へと入り、ふと空を見上げる。
『…なんて赤い空なの』
そして気付く、アクマの行く先にあるものの正体に。
『―――あれは、』
白い巨体。
しかしそれには頭も腕も足もない。
話だけに聞いたことがある。
過去に教団が行っていた人体実験の果てに起きる咎落ち。
シンクロ率0以下の人間。不適合者が無理にイノセンスとシンクロしようとすると起きるもの。
咎、それは使徒でないものが神と同調しようとする罪。
でも、どうしてこんなところで咎落ちが。
肩から伸びた光の光線が周りのすべてを焼き払う。
アクマたちが咎落ちのそれに攻撃しているところをみると、あれのイノセンスを奪いに来たのだとわかる。
『―――アレン、何処にいるの』
すでに日は沈み、血を零したようなそらに月が浮かび始める。
もう息も荒い。周りは竹が生い茂るばかりで何も見えない。
爪先が冷えてもう感覚がなくなってきていた。
prev /
next