灰色歌姫 | ナノ


  






「私は室長助手のリナリー。室長の所まで案内するわね」
「よろしく」




何とか無事、とは言えないけれど無事に黒の教団の中へ入ることが出来た。
私にとっては何年ぶりの帰還になるのかはこの際置いておこう。帰れなかったのは師匠の所為だ。


「アンジュは久しぶりね、本当に。何年振りかしら」
『師匠に振り回されっぱなしだったから…』



無理やりに笑顔を作ったためにたぶん引き攣ってる。
師匠は私には優しかったけど、アレンへの扱いが酷かったから…。かわいがってくれてるっていうのは同じなんだろうけど、方向性が。



「あ、カンダ」




もう用はない、とでも言いたげにこの場から去ろうとしていた神田をアレンが引き留める
名前を呼ばれ、神田は一応歩みを止めたけれど振り返るとアレンをにらみつけていた。


「……って名前でしたよね…?よろしく」


右手を差し出して握手を求めるアレン。その手をじ、と見つめる神田。



「呪われてる奴と握手なんかするかよ」



そう吐き捨てるように云うとカツカツと音を立てて行ってしまった。


『大丈夫だよ、神田はあれが普通なの。昔から。それにきっと任務帰りとかで…』
「あら、アンジュアタリよ。任務から戻ったばかりで気が立ってるの」


成長しても変わらないなぁ、と彼の後姿を見送った。
小さい頃は同じ境遇のお友達が欲しくてひたすら話しかけまくって、嫌がられて、泣いちゃったような記憶がなんとなくある。



「新入りか…」
「なんだ子供じゃねェか」
「老人かと思ったら…なんだあの髪」
「呪われてるらしいぞ」
「大丈夫かよあんなガキで…」
「まあイノセンスに年齢は関係ないからな」



見張りにこそこそと言われていて、思わず声のほうを睨みつけると声は聞こえなくなる。
まったく。



……でも、帰って来たんだ…。黒の教団に。




あまり実感がわかないなあ、と考えながらアレンとリナリーの後ろへとついて行く。
改めて教団の中を案内されて、懐かしさを少しだけ感じることが出来た。



「他にも療養所や書室、各自の部屋もあるから案内するね。ついでに言うとアレンくんの部屋はアンジュちゃんの部屋の隣だから」
「部屋が与えられるんですか!?」
「エクソシストは皆ここから任務へ向かうの。だから本部の事を”ホーム”って呼ぶ人もいるわ
出て行ったキリわざと帰ってこない人もいるけど」




リナリーの言葉にアレンと顔を見合わせる。そして心の中に師匠の顔が出てきた。



「あ!ここの階はどんな部屋があるんですか?」
「ここはいいの」
「はい?」
「いいの
さ、早く行きましょ」
『ほら、行きましょアレン。ここはいいの』

「私は室長助手のリナリー。室長の所まで案内するわね」
「よろしく」




何とか無事、とは言えないけれど無事に黒の教団の中へ入ることが出来た。
私にとっては何年ぶりの帰還になるのかはこの際置いておこう。帰れなかったのは師匠の所為だ。


「アンジュは久しぶりね、本当に。何年振りかしら」
『クロス師匠に振り回されっぱなしだったから…』



無理やりに笑顔を作ったためにたぶん引き攣ってる。それを見たリナリーも苦笑いを浮かべた。
師匠は私には優しかったけど、アレンへの扱いが酷かったから…。かわいがってくれてるっていうのは同じなんだろうけど、方向性がどうも違っていて。



「あ、カンダ」




もう用はない、とでも言いたげにこの場から去ろうとしていた神田をアレンが引き留める。
名前を呼ばれ、神田は一応歩みを止めたけれど振り返ると神田を引き止めた本人を睨みつけていた。
なんだか出会いがアレだったために今後もこの二人の雰囲気は良くなる気配がなさそうで考えものだ。


「……って名前でしたよね…?よろしく」


右手を差し出して握手を求めるアレン。その手をじ、と見つめる神田。



「呪われてる奴と握手なんかするかよ」
そう吐き捨てるように言うとカツカツと音を立てて行ってしまった。


『大丈夫だよ、神田はあれが普通なの…昔から。それにきっと任務帰りとかで…』
「あら、アンジュアタリよ。任務から戻ったばかりで気が立ってるの」


外見は成長しても中身は変わらないなぁ、と長い髪を揺らしながら去る彼の後姿を見送った。
小さい頃は同じ境遇のお友達が欲しくてひたすら話しかけまくって、嫌がられて、泣いちゃったような記憶がなんとなくある。



「新入りか…」
「なんだ子供じゃねェか」
「老人かと思ったら…なんだあの髪」
「呪われてるらしいぞ」
「大丈夫かよあんなガキで…」
「まあイノセンスに年齢は関係ないからな」



見張りにこそこそと言われていて、思わず声のほうに視線を流すとピタリと囁き声はきこえなくなる。
エクソシストになれるイノセンスに魅入られる人は疎らだ。年齢は関係ないのだ。
あまり若すぎると、AKUMAの所為で身内を失って教団にきた大人たちに良く思われないことが多い。

……でも、帰って来たんだ…。黒の教団に。




あまり実感がわかないなあ、と考えながら教団内をアレンに案内してくれているリナリーの後をとついて行く。
改めて教団の中を案内されて、懐かしさを少しだけ感じることが出来た。
あ、そういえばここで神田に泣かされたなぁとか、ここでリナリーに慰めてもらったなぁとか、いろいろ。


「他にも療養所や書室、各自の部屋もあるから案内するね。ついでに言うとアレンくんの部屋はアンジュの部屋の隣にしとくから」
「部屋が与えられるんですか!?」
「エクソシストは皆ここから任務へ向かうの。だから本部の事を”ホーム”って呼ぶ人もいるわ
出て行ったキリわざと帰ってこない人もいるけど」




リナリーの言葉にアレンと顔を見合わせる。そして心の中に師匠の顔が出てきた。



「あ!ここの階はどんな部屋があるんですか?」
「ここはいいの」
「はい?」
「いいの。さ、早く行きましょ」





アレンの背中を押して先へと進もうとする。
ここはコムイ室長の実験場だ。碌なものなんてないんだから。科学班のみんなが言ってた。


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