灰色歌姫 | ナノ


  







見えてしまった。


ずっとアレンだけが見てきた景色が。

ずっと、アクマを判別できて便利だな、としか考えてなかったこの景色が。

違った。違った。羨ましくなんてない、こんな、こんな景色をずっと一人で背負って




『……っ』
「ったく、キズついちゃったじゃない。ホント嫌なガキね
あ――服もボロボロ」





せりあがってきた物をこらえて飲み込む。
ばんばん、と服と身体に着いた砂埃を払うエリアーデ。



「体を転換しないんですか?」
「ブスになるから嫌なのよ。人間の姿のが好き」




乱れた髪を整え、こちらを睨む彼女に武器を構える。
かぽ、と仮面を外すような仕草で体を転換させたエリアーデ。


「でも、まぁこの状況じゃ、そんなことも言ってらんないか…」
「そうですよ」



武器を構え前に出る。
最早癖のように、アレンが再びフードを深くかぶった。





***





予想以上に激しい戦闘になった。
狭い室内では足りずに城の壁を破壊しながら戦闘が繰り広げられた。

が、相手がレベル2のアクマでもさすがに私達二人とやりあうのは分が悪かったようだ。

また壁を破壊し、出てきたのは大きな広間だった。
同時に反対側の壁も破壊されていた


「ぐっ、おのれェ」

 
反対側から出てきたのはラビとクロウリーだったらしく、ラビが優勢なのかクロウリーが地面に倒れこんでいた。
それをみたエリアーデが突然体を転換させ、彼のもとに駆け付ける。

彼女の体に乗っていた私たちは必然と地面に落ちようとしたところを槌にまたがったラビに掴まれ何とか助かった。



「よう、ふたりとも」
「『ラビ!』」
「あれ?アレンお前左眼治ったんか」



槌から降り、地面へと降り立つ。
ラビがエリアーデを見た時、驚きに目を見開く


「おい、あの女…!?」
『……』



たぶん、アクマの魂が見えたんだと思う。
私だけじゃない、ラビにまで影響しているのか



「アレイスター様」




エリアーデに抱き起されたクロウリーが目を覚ました。
最初に入ったのはエリアーデと、そして



「エエ…エリアーデ、何であるかそれは…」
「え?」
「おお、お前のその…体から出ているものは……何なのだ…!?」




アクマの魂が。
クロウリーはゆっくりとエリアーデの体から出ているそれを指さした。



「冥界から呼び戻され、兵器のエネルギー源として拘束されたアクマの魂…か?」




ラビが口元を引き攣らせて言った。


「そうなんかアレン?すげえぞ何で…オレにも見えるさ…?お前の、その左眼のせいか?」
「アンジュ、にも見えてるんですか?」
『…うん』



ラビの言葉にアレンが声を震わせて私に問うた。
アレンの表情を見てゆっくりと頷く。左手で左目を覆ったアレンの腕を撫でる。



「クロちゃん、その姉ちゃんはアクマさ!!説明したろさっき!あんたとオレらの敵さ!!」



ラビの叫ぶ声にクロウリーが小さく声を絞り出す。
確かめるように彼女の名前を呼んだ。


「エリアーデ…?お前は、何か、知っているのか…?私は…私は…?」


ぽたり、とクロウリーの手の甲にエリアーデの傷口から血がしたたり落ちた。
ここからエリアーデの表情は良く見えない。



「あーあ。ぶち壊しよ、もう」




言葉と共にエリアーデが身体を転換させ、クロウリーを城の柱へとたたきつけた。



「うまく飼いならして利用してやるつもりだったが、もういいわ!!お前をエクソシストにするワケにはいかないんだ、殺してやる!!!」
「ヤベェさ!クロちゃんさっきオレとバトってヘロヘロだった!!助けねぇと……っ」



ラビが顔を青ざめさせながら突然叫んだ
もうあだ名付けてる。
クロウリーの加勢にと一歩踏み出したところで床をぶち破って先程の食人花が足元から出てきた


『きゃあっ』

「どえええ!?花が床をブチ破って来なさった!?」

「まだあったんか――!!!くそ花ー!!」

「どんどん出てくる!!!」

「チクショー何なんだお前ら!!クロちゃんとこに行けねェェ!!」



床からどんどん現れる食人花に抵抗する暇もなく体が拘束されてしまう。
あっという間に目の前の景色が花だらけだ。










 


prev / next

[ back ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -