「アレン」
とある町の駅。
駅のホームにあるベンチに座りながら寝ているアレンにラビがいたずらを施していた。
彼が寝ているのをいいことに顔に落書きをしていたのだ。
『汽車が来たよ!!』
「みんな早く乗って!これ逃すと明日まで汽車ないんだから」
そんなラビに注意をしながらリナリーが大きな声で言う。
すでに汽車が発車する合図がホームに鳴り響いていた。
***
無事に汽車へと乗り込み、各自席に着くが顔にかかれた落書きを落としにアレンは汽車に備え付けられているトイレへと入っていく。
駅で買った飲み物を口にして私も暇だな、と流れていく景色を窓からのぞく。
『(少し外に出よう)』
思い立ったが吉日。
席を立ち、汽車の中を少し歩くと乗り込み口の場所へと出た。
人もいないし、すこしここにいよう。
景色を眺めながらガタンガタンと音を立てる汽車に目を閉じる。
暫くすると足音が近づいてきた。
「アンジュ?何してるんですか、こんなところで…」
『――…』
口を開きかけて辞めた。
現れたのはアレンだった。巻き戻しの街での事で私が少し気まずいのだ。
『…別に何も』
床を見ながらぽつりとつぶやくと、その場の空気に耐え切れずに車両へと戻った。
「さて」
車両へと戻るとリナリーの隣にぽす、と座る。
アレンも戻ってきたところでブックマンが世界地図を開いた。
「まずはわかっている情報をまとめよう」
こそこそと小声でしゃべる前に座っているアレンとラビにブックマンが釘を刺す。
「今私たちはドイツを東に進んでいる。ティムキャンピーの様子はどうかな?」
『ずっと東の方を見てるよ』
「距離がかなり離れてると漠然とした方向しかわかんないらしいから、師匠はまだ全然遠くにいるってことですかね」
コムイさんが言ってた、と付け加えたアレン。
ティムキャンピーには作った人、クロス元帥のいる位置がわかる機能が付いているらしい。すごい。
「一体どこまで行ってるのかなぁ。クロス元帥って経費を教団でおとさないから領収書も残らないのよね」
ブックマンの持つ地図の端を持ちながらリナリーが言う。
リナリーの肩に顎を乗せながら地図をぐいっと覗き込む。
「へ?じゃあ生活費とかどうしてんの?自腹?」
「おもに借金です」
ラビが問うとバッサリとアレンが切り捨てた。
「師匠って色んなトコで愛人や知人にツケで生活してましたよ。ホントにお金ないときは僕がギャンブルで稼いでました」
その場の空気が重くなる。
お前そんなことしてたんか、と。
私もずっとそんな生活をしていたのでアレンと共に教団に来るまで領収書きれること知らなかったのだ。
アレンの、ね、と同意を求めるような視線と思わずぶつかってしまいプイと慌てて逸らしてしまった。露骨すぎた。と自分一人で青ざめる。
「ところでアレン。左目はまだ開かぬか?おぬしには早く眼を治して周囲の見張りをしてもらいたい。他からの連絡によるとアクマ共が我々の足止めにかかってくるらしいのでな。
元帥の元へ着くまでは汽車での移動が長くなる。民間人を巻き添えにしないためにも迅速な判断ができるその左眼は重要だ」
「……はい…」
ちら、とこちらに視線を向けられたのを感じた。
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