灰色歌姫 | ナノ


  








周りにいたアクマすべてを掃討した。
周りの地面は抉れてしまっている部分もあり、砂煙が充満している。

そんななか、力尽きたように地面に伏していた。



久しぶりに声を出したせいなのか、心なしか喉が痛い。



「そういや、アンジュ声治ったんさ?」
『…そうみたい』




視界の端でアレンがほっとした表情をしたのを見た。
けれど巻き戻しの街での事を思い出して思わず視界から外す。




「あ、何体壊った?」

「30…くらい」

『…私もそれくらい』

「あ、オレ勝った。37体だもん」






なんでそんな質問をするんだ、と思いながら上体を起こす。
ちょっとだけ眩暈。



「……そんなの数えませんよ」
「オレ、なんでも記録すんのがクセなんさ〜。合わせて100か…単純に俺らだけに向けられた襲撃だな。お前らとリナリーが負傷してるのを狙ってか…はたまた何か別の目的か…」
『それ、病院大丈夫かな…』




リナリーは眠ったままで戦力外、コムイもアクマと対峙するための力なんて持っていない。
ブックマンは私にとって未知の存在だから、戦闘能力がどれくらいなのかもわからない。
思わず顔を青くして口に手を持っていく。



「……病院てあっちの方だよな」
「え…うん多分」
「ここ握って」




アンジュはこっち、とラビに腰に腕を回されぐいっと引き寄せられる。なぜか目の前にいるアレンがむ、とした表情をしてみせた。
思わず目の前にあるラビの槌を両手で握る。



「大槌小槌…

伸」




ラビの声と同時に突然の浮遊感。



『――――!!?』
「うわあああ!?どわああああ!!」
「病院まで伸伸伸――んっ!!」






***





途中で気になったことが一つ。

これ、どうやって停まるの。




「うわああああああああああ」





スピードが緩む気配すらない。
猛スピードのまま病院の壁へと突っ込んでしまった。
狭い室内に砂埃が舞う。




「アハハハ悪い!これ便利なんだけどブレーキの加減がちょい難しいんだなぁ。でも気持ちよかったろ二人とも」





頭を打った。
ずきずきと痛む頭部を手で押さえながら起き上がる。と前方にコムイとリナリーの姿。
そして隣にはラビ。

アレンとブックマンが居ない。



「?アレン?」

『あ、リナリー目が覚めたのね…!』

「小僧ども…っ!」





思わず目をぱちぱちと瞬かせているリナリーに飛びつき、
ブックマンが頭に気を失ったままのアレンを乗せ、顔を怒りで染め、立ち上がった。







 



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