灰色歌姫 | ナノ


  









「これは奇怪な。潰されていた左眼が再生し始めている」




数日間アレンの左目に巻かれていた包帯が解かれた。
その傷を見る勇気もなくただ地面を見つめる。



「まだ何も見えないだろうがしばらくの事だろう。この速さならば三・四日も経てば元に戻る。私の針は必要らない」




ほっと、胸をなでおろす。




「”呪い”――だそうだな」
「昔アクマにした父から受けた傷です」

「”アレン・ウォーカー”、”アンジュ・アズナヴール”
時の破壊者、灰色の歌姫と予言を受けた子供だね。我らはブックマンと呼ばれる相の者。理由あってエクソシストとなっている。あちらの小僧の名はラビ。私の方に名はない、ブックマンと呼んでくれ」









***







「コムイさん、入りますよ」




ブックマンの治療を受けた後、行く当てなど当然なく。
リナリーのお見舞いに二人で病室を訪れた。

がいざ扉を開けてみるとリナリーの寝ているベッドの周りが資料やら本で埋まっていた。

ベッドの近くで寝てしまっているコムイにアレンが手を掛けゆする。が一向に起きる気配はない。


そこで以前リーバーがしていた方法を行使し、コムイを起こすことに成功。



一旦はブックマンの医療道具の話になるが会話が途切れ、アレンが本題に切り出す。




「忙しいのにどうしてわざわざ外に出て来たんですか?僕らやリナリーのため…じゃないですよね」



リナリーの周りが埋もれて島ほどの資料の数。
それをわざわざ持ち出してまでもここに来た理由。



「ノアの一族って何ですか?それに…」



コムイから視線を外したアレンと視線が交わる。





「それをウチらに聞きにきたんさ。正確にはブックマンのジジイにだけど」






急に増えた声にその方向を向く。
そこにはみかん、と書かれた段ボールの中から顔を出す先程自己紹介をしたばかりのラビの姿。

っていつ入ってきたんだろ、この人。

そんな心情を知ってか知らずかラビはにこ、と笑う



「ノアは歴史の裏にしか語られない無根の一族の名だ。歴史の分岐点に度々出現してんだがどの文献や書物にも記されてねェ。
そんな不明が伯爵側に現れた。だからわざわざ来たんしょ、コムイは。この世で唯一裏歴史を記録してるブックマンのトゴえ…」





言いかけたところでラビの頬に強烈な蹴りが見舞われた。
犯人はブックマン。
見事な飛び蹴りで吹っ飛ばされたラビが物凄い音を立てて資料の山へと突っ込んだ。



「しゃべりめが。何度注意すればわかるのだ。ブックマンの情報はブックマンしか口外してはならんつってんだろ」

「いーじゃんよオレももうすぐアンタの跡継ぐんだしさぁ」

「お前のようなジュクジュクの未熟者にはまだ継がせんわバァーカ」

「こンのパンダジジイv」




またどこから入ってきたのかわからない人が現れた、と口元が引き攣る。
ちら、とブックマンの視線がこちら、アレンに向く。


「アレン・ウォーカー」
「は、はいっ!」




先程ラビが食らった飛び蹴りを見てビビったアレンが大げさに肩を揺らす。




「今は休まれよ、リナ嬢が目覚めればまた動かねばならんのだ。急くでない」





そう告げられるとアレンとラビ、そして私も病室から締め出されてしまった。
思わず三人で目を合わせあった。








 


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