ロードが姿を消した扉がばたんと音を立てて閉じる
目の前に立つアレンがぎゅ、と拳を握るのをまるで他人事のように見つめていた。
不意に鈍い音を立てて地面が揺れた。
『!?』
「何だ!?」
いきなりのことでバランスを崩し尻餅をつく。
周りを見渡せば床も壁もひび割れしていき、この空間が崩壊していく。
「崩れてく…!?」
「アンジュ!!」
足元の地面が大きな音を崩れる。
その瞬間にアレンに名前を呼ばれ咄嗟に彼に向って手を伸ばす。
ギリギリで掴まれた指先から腕を引っ張られ引き寄せられる。
崩壊した地面から放り出された先。
そこには無数のプレゼント箱のようなものが浮いていた。
その中に一つ、箱が崩れているものが。
容易にに想像できた。
今まで私たちはあそこにいたのだと。
***
気が付いたらまた違う場所にいた。
「あれ?」
直ぐ近くでアレンの声。
どうやらアレンの上に乗っかっていたようで慌てて離れる。
『ここ、ミランダさんのアパート…?』
「アンジュ!!アレンくん!!ミランダの様子がおかしい」
隣の部屋から切羽詰まったリナリーの声。
立ち上がり急いで隣の部屋へ向かうと床に蹲るミランダとそれに寄り添うリナリーの姿。
が、ミランダの様子が明らかにおかしい。顔色も真っ青だし汗の量も尋常じゃなく息も可笑しい。
「ミランダさん……!?」
『発動を停めて!これ以上は貴方の体力が限界だわ』
ミランダのそばに駆け寄り膝をつく。
明らかにイノセンスの原因のそれに言うが、ミランダは首を横に振る。
「…ダメよ……停めようとしたら…」
周りに浮いていた時計板が一斉にこっちに寄ってくる。
そこでやっとミランダの気持ちが理解できた。
「吸い出した時間ももとに戻るみたいなの。また…あのキズを負ってしまうわ……」
私は、まだ大きなけがをしていない。
けれどアレンもリナリーも気を失うぐらいの大けがを負っている。
それが発動を解けばまた二人に戻ってしまうのだ。
「いやよぉ…初めてありがとうって言ってもらえたのに……これじゃ意味ないじゃない……」
泣き崩れてしまう彼女にアレンがそっと両肩に手を置く。
「発動を停めて。停めましょ、ミランダさん」
やっと顔を上げたミランダにそっとアレンは手を放す。
「貴方が居たから今僕らはここにいられる。それだけで十分ですよ
自分の傷は自分で負います。生きてれば傷は癒えるんですし」
へっちゃらへっちゃらと笑って見せるアレンにリナリーが「そうよ」と続ける。
「お願い停めて…」
――ー時計の鐘の音が響いた。
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