灰色歌姫 | ナノ


  












「これは何?」



今回の任務地であるこの場所。
街の一角にあるこじんまりとした喫茶店。




「アレンくん!」
「…すみません」






隣に座るリナリーが手に持っているのはアレンが見つけたという女性の似顔絵。
とは言えないようなもの。


「すみませんじゃない。どうして見失っちゃったの」
「すごく逃げ足早くて…この人。でも ホラ似顔絵!こんな顔でしたよ」
『似顔絵…?』
「あれ…?」



アレンは物凄く絵が下手だ。むしろ芸術的にさえ見えてしまうほどに。
しかも本人には自覚がないのだから困る。



「でもこんなことなら二手に分かれずに一緒に調査すればよかったね。昨夜 退治したアクマ…確かにその人にイノセンスって言ったの?」
「はい」





今日は朝から二手に分かれてこの街を見て回っていたのだ。効率化を図って。
私とリナリー、そしてアレンに分かれて。
が、振り分けが悪かった。



「道に迷って路地に入り込んだら偶然見つけて…運が良かったです。たぶん今回の核心の人物だと思いますよ」
「アレンくん。今度から絶対一緒に調査しよう。見失ったのも迷ったからでしょ」




せめて私が一人で行動すればよかったのかな、と珈琲に口を付けたリナリー。
私も目の前に出されたサンドウィッチを頬張る。



「二人のほうはどうでした?」
「んー…コムイ兄さんの推測はアタリみたい。この街に入った後すぐ城門に引き返して街の外に出ようとしたんだけど、どういうワケか気付くと街の中に戻ってしまうの」
『あ、それなら私もやったよ。城壁を壊しても見たんだけれど駄目だったわ。外に出たと思ったら街の中のもとの場所に戻されちゃってた』




サンドウィッチ一切れを食べ終わり、紅茶で喉を潤す。



「あ、それじゃやっぱり…」
「私たちこの街に閉じ込められて出られないってこと。イノセンスの奇怪を解かない限りね」




***






教団に帰ってきて三か月。
今回私とアレン、リナリーにあてられた任務はコムイさんをほとほと困らせたものだった。



「たぶんね、たぶん。あると思うんだよねイノセンス
と言っても、たぶんだからねたぶん。期待しないでねたぶんだから」




ごたごたとたぶんを並べるコムイに飽きれながらも憐みの目を向けるアレン。



「わかりましたよ、たぶんは」
「なんてゆーかさ、巻き戻ってる街があるみたいなんだよね」
『巻き戻る、ですか?』
「そう、たぶん。時間と空間がとある一日で止まってその日を延々と繰り返してる」




コムイがリーバーの名前を呼び、もはや痩せこけて死にかけの状態のリーバーが調査報告書を持ってやってくる。
ガタガタ震えてる。



「調査の発端はその街の酒屋と流通のある近隣の街の問屋の証言だ。先月の10月9日に”10日までにロゼワイン10樽”との注文の電話を酒屋から受け翌日10日に配達」




ところが何度街の城門をくぐっても中に入れず外に戻ってしまうので気味が悪くなり問屋は帰宅。
すぐに事情を話そうと酒屋に電話をしたが通じず。

それから毎日同じ時間に酒屋から同じ注文内容の電話がかかってくるらしい。




「調べたいんだけどさあ。この問屋同様探索部隊も街に入れないんだよ
というワケでここからはボクらの推測
1、もしこれがイノセンスの奇怪なら同じイノセンスをもつエクソシストなら中に入れるかもしれない。
2、ただし町が本当に10月9日を保持し続けてるとしたら入れたとしても出てこれないかもしれない。そして調べて回収!エクソシスト単独の時間のかかる任務だ…以上」






最後まで疲れ切った様子だったコムイ。
これが今回の任務の概要だ。









 


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