灰色歌姫 | ナノ


  








「だいぶ遅くなっちゃいましたねー」



あくびを噛みしめながら教団の地下水路へと到着した船から降りる。
降りるときにアレンが手を貸してくれる紳士っぷりを発揮。



「この嵐で汽車が遅れましたから…」
「もう真夜中だなあ…回収したイノセンスはどうしたらいいのかな、アンジュは知ってる?」
『ごめん、知らない』





首をゆるゆると振るとトマが船をロープで固定しながら代わりに答えてくれる。



「化学班の方なら誰か起きてらっしゃると思いますよ」
「じゃあ行ってみます」




地下水路から地上へと出ようと階段を登ろうとしたその時、上から何かが降って、



『リナリー!?え?どうしたの!?』
「も、戻ったかふたりとも…」




階段の上からゆら、となぜか傷だらけのリーバーが現れる。



「そのキズ…?なにがあったんですか」
「に…逃げろコムリンが来る…」
「『は?』」




コムリン、聞きなれない単語というか響きだけで嫌な感じがするとは。
どどどと地響きがだんだん近づいてきてる気すらする。
アレンと二人で顔を青くさせていると壁を突き破り勢いよく現れたのは



「来たぁ」




コムリン。
たぶん。

いきなり攻撃してきた。
慌ててリナリーを抱えてそれを回避する。



「な、なにあれ?なにあれ!?」
「くっそ、なんて足の速い奴だ…」

「発…見!
リナリー・リー アレン・ウォーカー アンジュ・アズナヴール
エクソシスト三名発見」




機械音でしゃべるそれに、名前を読み上げられ目を見開く。
何が起きているのか全く分からずに目を白黒させる。



「逃げろ!こいつはエクソシストを狙ってる!!」
「手術ダ――ー!!」




雄たけびを上げながら襲い掛かってくるコムリンに、状況を全くつかめないまま、眠ったまままのリナリーをアレンが背負い、全力で走り逃げる。



「リーバーさん!ワケがわかりません!!」
「ウム。アレはだな!コムイ室長が造った万能ロボコムリンつって…見ての通り暴走してる!」
『何でです!?』





コムリンから逃げ切ったその先で息を整えながらリーバーが事の顛末をかいつまんで説明してくれる。
要約すればコムイ室長がまたやらかした、ということだ。


『リナリーは大丈夫なの?』
「コムリンの麻酔針くらって眠ってるだけだ。はあぁー、ラクになりたいなんて思ったバチかなあ…」
「え?」



ごっと鈍い音を立てて壁に頭を打ち付けたリーバーにアレンが聞き返す。


「お前たちエクソシストや探索部隊は命がけで戦場にいるってのにさ。悪いな。
おかえり」
『ただいま』



そう返せば、アレンも、と思っているとどこか遠くを見つめていた。
昔の事を思い出したのかも知れない。
一度アレンの名前を呼べば我に返ったのか、裏返った声を上げて返事をした。



「なんだよ、もしかして任務の傷が痛むのか?」
「いえっ平気です。た、ただいま」




ぎこちなくも笑顔を浮かべたアレンにどこかホッと胸をなでおろした。





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