「…痛っ、何だったんだ今の…っ」
『…ぁ、れん……ごめん、……』
自分の身を守るのに精いっぱいの筈なのに、アレンは私を庇ってくれた。
自ら戦場に出てきたのは私なのに、守られてばっかりだ。今もがれきにぶつかったときにはアレンに抱きしめられて私は何もダメージを受けていない。
けれど先程のアクマの攻撃のせいで、息をするだけでも身体が軋んで痛みがする。
大丈夫ですよ、と声を掛けながら私の背中を優しく右腕で撫でてくれる。
『…アレン、左腕…けが、してる』
「……げっ、うわ――ーっキズ!キズついてる!!またコムイさんに修理されるよどうしよう!!
怖いなぁ…」
こんな状況なのに、いつも通りのアレンの様子に、ほ、と心のどこかで安心する。
『……は、ぁ』
「?なんだろ軋むような音が…」
『…?』
アレンがぼそりと呟いた瞬間、私たちがいた地面が音を立てて崩れ落ちた。
「お!?おぉおぉぉぉぉ〜」
落ちていく中も、私の腰に腕を回して離さないでいてくれた。
途中で、アレンのイノセンスの爪先が照明に引っかかり、落下していく感覚がなくなった。
「何だ、ここ?町の地下にこんな広い空洞があったのか…」
安心したのもつかの間、引っかかっていた照明がバキ、と折れ今度こそ地面にたたきつけられた。
『…道、が』
地面に手を付きながらなんとか立ち上がる。
「アンジュ、歩けますか?」
『なん、とか…大丈夫』
行きましょう、と歩き出すアレン。それについて行こうと私もおぼつかない脚に鞭を打って歩き出した
***
「ど、どうしよう…迷った」
『…やっぱり私が前に行けばよかった?』
狭い通路に入り込み、四つん這いになりながら進むこと暫く。
アレンが方向音痴なことは私がよく知っていた。私が前に行こうかと提案はしたものの、顔を真っ赤にして慌てて拒絶したのだ。
「あ゛あ゛あ゛っむやみやたらに動くんじゃなかった!ここすごい迷路だよっこんなトコで迷子になってる場合じゃないのに〜〜っ!!」
『あ、アレン落ちついて』
頭を抱えて涙目になりながら叫び出すアレンに驚きながら彼の肩を落ち着かすように撫でる。
「ティムキャンピーがいてくれたらなぁ…」
『……どこにいるんだろう…』
ふと落ち着きを取り戻して、呟いたアレン。
暫くして、なにか物凄い音をさせながら近づいて来る気配がした。
その方向へ二人同時に顔を向けると何かがアレンの顔へとめり込んだ。
『っティムキャンピーっ!』
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