灰色歌姫 | ナノ


  




古代都市 マテール






今はもう無人化したこの街に亡霊が棲んでいる――

調査の発端は地元の農民が語る奇怪伝説だった。




亡霊はかつてのマテールの住人。街を捨て移住していった仲間たちを怨み、その顔は恐ろしく醜やか。
孤独を癒すため街に近づいた子供を引きずり込むと云う。


「あの」


そう書かれた支障を見ながら全力疾走できることは本当にすごいと思う。
現に私は走ることに全力で手元にある資料を見る余裕なんて少しもないのだから。
資料を片手でひっつかんで全力疾走。限界。
それより髪の毛一つにまとめてこれば良かったな…と思わず遠い目をしてしまう。
バシバシ当たって痛い。


「ちょっとひとつわかんないことがあるんですけど…」
「それより今は汽車だ!!」
「お急ぎください、汽車がまいりました」
「でええっ!?これに乗るんですか!」



今まで走っていたのは町中の建物の屋根の上。
そして下に走るのは汽車。



『…っ』




少ししり込みをしてしまう。少し後ろで走っていたアレンに腰に腕を回されると思うと一気に抱き上げられる。
そして訪れる浮遊感。




『……ッ!』





後頭部に手を回され、アレンの首筋に顔を埋め、腕を彼の首に回して衝撃に耐える。




『び、びっくり、した…』
「飛び乗り乗車…」
「いつものことでございます」





無事に汽車の屋根へと飛び移った。


『ごめんね、アレン…ありがとう』
「いえ、僕の方こそいきなり…」
『きっと一人じゃ乗れなかったから』



だからありがとう、と再び言った。

そして捜索部隊の男を先頭に汽車の中へと入っていく。今度は一人で降りれた。
アレンにすごい心配されたけど



「困りますお客様!こちらは上級車両でございまして、一般のお客様は二等車両の方に…ていうかそんなところから…」




中へ無事に着地すると神田の前には乗務員の男が困った顔をしていた、
それはそうだろう、と思うけど。




「黒の教団です。一室用意してください」





捜索部隊の男の言葉に乗務員が驚き、神田の胸元、そして私の胸元についた十字架を見ると慌てて頭を下げて部屋を準備しに走って行ってしまう。




「なんです、今の?」
「あなた方の胸にあるローズクロスはヴァチカンの名においてあらゆる場所の入場が認められているのでございます。」
「へえ」





最後に降りてきたアレンがその場面をみて純粋に疑問を投げかける。正直私も何が起こっているのかわかっていなかったからとても助かるのだけど。





「ところで、私は今回マテールまでお供する捜索部隊のトマ。ヨロシクおねがいいたします」





 






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