灰色歌姫 | ナノ


  






アレンとともに目にしたのは血の海だった。
もう、誰が息をしているのかわからない。

バク支部長、リーバー班長、科学班のみんなが、

「ア、レン…」

その血の海の中心に佇む大きな何か、

「し…しん…か、しんか、した…」

それに飲み込まれそうになっているひと、肌に黒い五芒星。
黒色は次第に肌の色を飲み込んで、


「わる、い、ふん…ばれな、く…」


体にぴし、とヒビがはいって砕け落ちる。
アクマのウイルスが体内に入ってしまえば人間は死に至る。なんども目にしてきたはずなのにそれはいつまでたっても慣れてくれない、慣れちゃいけない。
そのひとを飲み込んだものは人の女の形をかたどっていた。
それの腹は大きく膨らんでいて、そこから何かが這い出たように割れていた。

嗤い声が聞こえる。

そこからのぞいたのは、


「ぼく、れべるふぉお」



アレンの左目がアクマの魂を視界に入れる。
途端アレンが口元を手で覆ってその場にうずくまってしまう。
目に涙を浮かべて、体を震わせるアレンをかばうように、アクマとの間に入って立ちイノセンスを、双剣を向ける。


『…アレン、お願い立って…』
「…アンジュ」


こいつ、このアクマ、自分のことをレベル4だと言った。
私たちが今まで対峙してきたのはレベル3までだ、いままで遭遇したことのないレベルを名乗るアクマに油断なんてできない、さっきから体の震えが止まってくれない。


「……ないてるの?」


アクマがゆっくりとこちらに近付いてくる。
ひどいことを言ってるのはわかってる、でも、それでも
アレン…!すがるように後ろにいるアレンを見る。


「ごめん、ごめん…アレン、アンジュ」


血の海で倒れていた、ジョニーが、座り込むアレンのイノセンスに手を添えた。


「だすけて…みんなを助けて…たすけて…ごめん…ごめんなぁ…助けて…」


たすけて、と泣き縋るジョニーにようやくアレンが正気を取り戻す。添えられた手に右手を被せてぎゅうと握った。



「みんなってだれ?」


アクマの言葉に、アレンが雄叫びをあげながらイノセンスを大剣に変え、一瞬で私の前に立ち代わりアクマへと斬りかかる。


「お前を破壊する!レベル4」
『まってて、ジョニー』


アレンと立ち代わりながらレベル4へと斬りかかるも、全て軽くあしらわれてしまう。
いつの間にか、先ほどまでいた場所にまで戻っていてしまった、視界に映る動けないミランダを抱えるマリとブックマンに思わず眉をひそめる。
__まずい、このアクマを相手に守りながらなんて絶対にできない、
アクマは攻撃を受け流しながら、周りへと視線を走らせると口を開く


「そうだ、わすれてました。ここはくろのきょうだんほんぶでしたね」
『ブックマン!あっちに怪我人がたくさんいるの…!お願い助けて!』


私の言葉にブックマンが振り返り、あちらの惨状を目にする。


「さつりくへいき、ぼくのそんざいりゆうをじっこうさせてもらいましょう」
「させるか」


アレンがレベル4の方へと乗り上げ、破滅ノ爪で地面へと叩きつける。
衝撃の砂煙が晴れるとそこにいるはずのレベル4がいない、

「…うたひめはきずつけない、まずはおまえからです」

アレンの背後に回っていたレベル4に、思わず双方の間に入り込み羽衣で自分を守る体制に入る。
ただ、レベル4は指を弾いただけだった。

「アンジュ…!?」

のに体に走った衝撃が凄まじかった。イノセンスで防御していたはずだったのに体が悲鳴をあげる。
背後にかばったアレンの体ごと大きく飛ばされてしまった。
壁に打ち付けられ、地面へと転がる。衝撃に耐えられずにイノセンスの発動が溶けて、握りしめていた双剣が消えるのを感じた。

アクマの攻撃から庇えたけれど、壁に打ち付けられた衝撃でアレンとともに動けなくなってしまった。

『……っ』

これ、内臓やられてないかな。肋は折れてしまっているだろうな。
倒れこんだまま、指を動かすことすら億劫だ。口から溢れ出て地面にシミを作る血を見た。


「みなごろしです」


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