私とラビが下へと降り立つと、見たことのない姿のものに追い詰められているアレンの姿がすぐに見えた。
イノセンスをすぐに発動させ、私が、攻撃を受けたすきに、ラビがアレンを抱えて数メートル退く。
『…貴方、ティキなの?』
兜をかぶり、顔の上半分が覆われ表情はわからない。
しかし、ここにいたのはティキと、レロだけだったはずだ。
「そのカッコは何の冗談だ…?」
「ラビ…アンジュ…」
動きの見せないティキ背を向けないように、アレンたちのいる場所へと下がるとアレンが小さく声をだす。
『アレン、なに、あれ』
「扉…が…」
アレンの声に双剣を構えたまま視線だけをずらすと、先程アレンと一緒に巻き込まれ引きずり落されたロードの扉が粉々に、砕け散っていた。
あれがなかったら、外にでれないのに
ぞわっと全身が震える。
「ぐ、くくく、くっ」
ティキが突然怪奇な笑い声をあげたかと思うと、こちらに物凄いスピードで向かってくる。
後ろの二人はもうすでに満身創痍だ。私しかいない。
ぐっと腰を落として双剣をティキへと向ける。
ティキの振り落した拳だけで、地面が大きく窪む。
間一髪でそれを避けたラビとアレン。
――あ、これは駄目だ。直感がそういう
『……っラビ!!アレンを連れて逃げて!!!』
私だけが無傷だ。動ける、だけど、私だけじゃ足りない、負ける。勝てない。
後ろの二人を庇い切れない。みんな死んでしまう。
__それはだめだ。
『リナリーたちも連れてできるだけ遠くに!!!』
「アンジュはどうすんさ!!」
『―−―、大丈夫だから!!二人が逃げたら私も行く!!』
ラビ、イノセンスにひびが入ってた。
そのまま戦い続けたらきっと壊れてしまう。それは駄目だ。
それに、ここで皆が死んではいけない。
また愛する人たちがいなくなるのだけは絶対に嫌だ。
今、私が戦い続ける理由は皆だ。
みんなで教団に、ホームに帰るため。
『アレンたちをお願い。すぐに追いつくわ』
振り返りながら笑顔を作る。うまく笑えてるかしら。どうだろう。
ラビの顔を見ないようにして、震える脚に鞭をうって、ティキへと駆ける。
後ろで、ラビがイノセンスで上へと向かったのが分かった。
ティキの視線がそれを追う。
『貴方の相手は私よ、ティキ』
「ヒキ…ッ」
刺し違えてでもここで終わらせる。。みんなが逃げる時間だけ稼げたら上出来だわ。
_違う。間違えたわ。
『あなたはここで終わらせる』
生きて、彼らに追いつかないと、アレンに怒られちゃう。
イノセンスの双剣を大剣に造り替えて、ティキへと大きく振りかざす。
が、それも片手で封じられてしまった。
どれだけ力を込めても震えるだけで、格の違いだけが無残にもたたきつけられる。
一旦距離をとろうと力をさらに込めるが、目が追い付かない速さでティキが私の背後へと回り込み、攻撃を受けてしまう。
抉られた肩の痛みに思わずその場に蹲る。
『−―…っ』
地面に流れ出た血の量に目の前が赤く染まる。
後ろに流れていた髪が前に流れてくる。
『………』
背後でティキが、手に着いた私の血を舐るのが見えた。
代々"快楽"のノアは伯爵から期待されるほどの強さを持つ、
『…はは、ほんとバケモノみたい』
知らないのに、要らないのに、流れてくるノアの記憶に眉を潜めた。
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