灰色歌姫 | ナノ


  








「さて、やっとゆっくり話せるようになったな、少年」




長い机。正面に並ぶように座ったティキの正面に座ったのはアレンだ。
それにつづいて私はアレンから一番近い席に着くと私の隣にチャオジーが、正面にはラビとリナリーが席に着いた。




「そんな顔すんなってー。罠なんか仕掛けてねぇよ、イカサマはしないって言ったろ?」




呆れたように、かわいくねーな、と息を吐いたティキ。
ちら、と視線を横にずらすと、ロードが私の座る椅子の肘置きに座りながら私にすり寄ってきた。




「大丈夫だよぉ、アンジュ。出口の扉はちゃんと用意してあるから」

『うーん、ちゃんと外に通じてればいいんだけれど、』

「ふふ」





頬とほほを合わせるようにくっついてくるロードに少し戸惑う。
…なんでこの子はこんなにも私に友好的なの。



「話したい事ってなんですか、ティキ・ミック卿。それとも手癖の悪い孤児の流れものさん?」
「そうツンツンすんなよ、少年。ノアをパンツ一丁にしたエクソシストなんて少年が初だぜ?オレらって縁あると思わん?」

「別に。カードでパンツ一丁にした人なんていっぱいいますから」
「おおう黒い発言!」




本題に入ろうとしないティキにしびれを切らしたのか、アレンが先に切り出した。


「この左腕のことですか?」



と。その発言にティキの纏う空気が変わった。


「実はけっこー衝撃だったんだよね。確かに壊したハズなんだけどな」
「壊せてなかったんでしょう?ここに在るんだから」

「おっ?イノセンスに興味出てきたぁ?ティッキー?」
「ちょっと出てきた。じゃさ、少年」



ロードが言いながら私の髪を弄り始めてしまった。



「ティーズに心臓を喰われても生きてたのはその左腕のせいなわけか?」

「心臓って…ッ!?」
「聞いてねぇぞおいアレン!お前そんな傷負ってんのか!?」
「アンジュのイノセンスのおかげ、と、左腕の一部が心臓の一部になってくれてます。問題はありませんよ」




知らされていなかったそのこととにリナリーとラビがアレンに問い詰める。
それを聞いたラビが手を顔の前に持っていき、何かを考えるように一点を見つめる。



「ロード、そろそろ姫さんから離れてくんない?」
「え〜、やっとアンジュと一緒にいられるようになったかもしんないのにぃッ」




ティキの言葉に反論してさらにぎゅむーと私に抱き着いてきたロードに顔を青くする。
アレンの視線がなんか鋭くなった気がする怖い。


「オレね、千年公の終焉のシナリオっての?遊び半分で参加してたんだけどさ。
やっぱ悪はそうでなくっちゃあなぁ、うん。少年のおかげでちょっと自覚出てきた。」



がたん、と席をたったティキ。


「退治?本気でやんねぇとなってのがわかったわ」



刹那、黒い蝶が視界の端に映る。
その蝶がリナリーの肩に止まろうとしたその時、

「ティキ・ミック。僕もひとつ言っときたいんですが」


アレンのイノセンスが蝶を貫いた。



「これ以上…僕の仲間に手を賭けたら、僕は貴方を殺してしまうかもしれません」



机に脚をかけ、ティキへと飛び出すアレン。



「アンジュ、信じてて、アイツは僕が行く」
『…ア、』

「少年のことは嫌いじゃないんだがな」


「『アレンッ』」




単身で突っ込んでいったアレンに続くようにラビが席を立った、が、その前にロードが立ちふさがる。



「ティッキーもねぇ、アレンのことが好きなんだよ。邪魔しなーいで。僕と遊ぼ――ーブックマン」










――ー方舟消滅まで――刻限は間近…



「ラストダンスといこうぜ、少年」




黒い蝶、ティーズを纏うように、周りにはばたかせるティキにアレンがイノセンスを振るった。






 


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