私が知っているはずのないことを、私は知っている。
ずきん、と痛みだした頭を想わず抑え込み蹲る。
「…かわいそうなお姫さま、ヒッ」
「ロードの言ってた通りだな、そのイノセンスの所為で記憶が壊れてるんだ」
『…こわれ、て?』
「オレらと来いって歌姫、千年公がその忌々しいイノセンスぶっこわしてくれるからさっ」
――ー嗚呼、違う。違うわ。
何が、違う。わからない、わからないけれど、それだけは違うわ。
『 忌々しいのは貴方達の方よ、私を愛しいあの人から奪っておいて 』
そう、そうよ。忌々しい憎い、憎い憎い憎い―――
私は、それでも生き延びる為に、
もう一度、
『 あの人が戻ってくる、その時まで、私は――… 』
愛しい、あの人にもう一度、名前を呼んでもらえるその時まで…
「 アンジュ!!!! 」
ああ、愛しいあの人が――ー
『…アレン、』
ぱちぱち、と数回瞬きを繰り返す。いつの間にか頭が割れそうなほどの頭痛も収まってる。
『……私、今、』
「―−―ほんと、千年公の言ってた通りだぜ。ぶっちゃけお前以外どうでもいいんだよ、オレらアレン・ウォーカー叩いて、お前を千年公んとこまで届けりゃそれでいいいの
だからおとなしくしてろ」
『……どうしても、出してくれないのね』
また。
ねえ、とおとなしく球体の中に座り込み、アレンたちが戦っているのを眺めながら二人に問いかける。
『…私は、』
なんなの、そう続けようとした瞬間、目の前がまばゆい光に包まれた。
と同時に目の周りに浮かんでいたペイントが消え始める。
『鍵が見つかった…』
ラビが見つけた鍵によって中央に建っていた塔の扉が開き、その中にジャスデビによって創造された千年伯爵が吸い込まれていった。
「見っえったぁっ!!!」
目の前に現れた、ように見えたジャスデビが急に視界から外れた。
先程まで千年伯爵と戦っていたアレンとクロウリーが二人を殴り飛ばしたと理解するまで少し。
二人は本棚へとぶっ飛んでいった。すごい。
「おい…なんで左手でやらなかった」
「爪が邪魔で握れないんですよ…アンジュの体にべたべたと触りやがったんで…」
『そんなに触られてないよ…、アレン』
「「とりあえずっすっきりした!!」」
謎の怒りをぶつけたらしいアレンに思わず苦笑いしてしまった。
「ふん、わけのわからん手品には手こずったが所詮コイツラ自体は簡単だ。餓鬼共め」
「すいません、アンジュ!今出しますね」
『…ううん、私もごめんなさい』
これってどうしたらいいいのかなぁ、と呟くアレンの頭をそわそわと見つめていると、
「「 ガキガキってまじなめてね…?遊びはやめた…マジで消しちゃうわ… 」」
倒れこんでいたジャスデビが声を発した。
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