灰色歌姫 | ナノ


  





方舟の出口に続いていくこの先の扉を開ける鍵と

ジャスデビと名乗るノア。


それが今、私たちの視界の中から



――完全に隠されてしまった







***





「この目のペイントっ、全然とれねぇさ!」

「くそっ、面倒くさい敵だ!!」

「すみません、鍵を取られるなんて一生の不覚です…」

「落ち込まないで、アレンくん」

『…この目のペイント、騙しメガネって言ってた…よね』



どーん、と鍵を盗られたことに落ち込んでいるアレンを後目に小さな声で呟いたのに、アレンが私を見て小さく返事をした。
みんなの視線が集まり、少し体を小さくしながら、言葉を選ぶ


『も、もしかしたら、なんだけど…この床一面の鍵…私達の持ってたのと形とか重さも同じだけれど、でもただの幻なんじゃないかなって。本当の現実は、鍵は床にひとつしか落ちてない。この鍵の山に隠されたって私たちの目が騙されてるんじゃないかな…』

「…なるほど」



私の考えに納得したようにうなずくラビ。


「ヒヒッその通りだよ、お姫さま!ヒヒッ」

「お前らは出口にたどり着く前にここで全滅だぜ!本物の鍵はホレ!そこにポトリと落ちてんだぜ!拾いたきゃ拾えっ」

「けど騙しメガネを撃たれたお前らにはこう見えてる!ヒッ」

「お前らの目が騙されてる限り」

「騙してる側のジャスデビの姿は映らないよ――ヒヒッ」



交互にしゃべるジャスデビに、打開策が浮かばずにあたりを見渡し警戒することしかできない。



「「死んでちまえ!」」




瞬間。
火の玉が私たちを囲むように現れ、同時に爆発を起こす。

突然の攻撃に、かわすことが出来なかったチャオジーが背中に大きなやけどを負う。



「この部屋のどこかにはいるんでしょう…!?だったら引きずり出してやる!!」




爪ノ王輪を発動させたアレンが、部屋の壁一面に向け攻撃を繰り出す。が、



「当たるかバァーカ!!」
「「 緑ボム 」」



背後からまた新たな攻撃を繰り出し、アレンの背後を襲う。
スライムのようなものに包まれたアレンをラビが火判でスライムを焼き、助け出す。


「アレン、アンジュ、この騙しメガネはオレが解いてやるさ。本物の鍵を見つけ出すまでクロちゃんとリナリーたち守っててくれねぇかな」
「えっ…?でも、ラビ。どうやって鍵を…!?」

「オレの本職さね!キズや汚れ、鍍金の剥げ模様まで本物の鍵は一度見た時頭に記録してある。こんなメガネでブックマン後継者が騙されかっつの!」

「よし!じゃあ1分で探してください!」

「それは無理!!」



さすがに無茶ぶりをするアレンにラビが即答する。



「鍵を見つけたらすぐリナリーとチャオジーを連れて次の扉へ進んでください。クロウリーもすぐ扉に投げ込みますから。頼みましたよ、ラビ。
アンジュは残って僕と戦ってもらえますか?」

『−―言ったでしょ、アレン。ずっとそばに居るよ。最後まで!』




笑顔で頷くとアレンがそっと口元をほころばせた。



「「 青ボム 」」

『!!』
「鍵を…っ探して…ラビ!」




アレンの体を蝕む氷をクロウリーと共に両手剣で砕く。


「聞こえたぞ、小僧。私を投げる…とか?」

「あ、聞こえました?」

「まったく赤毛のガキといい、ノアのガキといい」


クロウリーはアレンの手首を強くつかむとそのまま振りかぶり、


「生意気なガキどもばかりよ!」
「うわぁっ!!」


壁へと投げつけた。
衝撃で壁の本棚に並べられていた本が飛び散る。


「ッッッテェ〜そんな怒んなくてもいいじゃないですかクロウリー」


目を回しながら本に埋もれてしまったアレンを慌てて追いかける


「イッッッテェェ―――ー!!!」
「ヒィッ!!この野郎っ白髪!!痛ェだろヒィー!!」


すると、向かうところ、アレンのぶつかった本棚辺りからジャスデビの叫び声が聞こえだす。


「伏せろ、小僧!」
「クロ…ッ」


それを私の後からスゴイ速さでクロウリーがアレンの背後へと殴りかかった。
寸前で反り返り避けたアレンが驚きに目を見開く。



「ち…かわしたか。もっとお前を強く投げこめばよかった」
『く、クロウリー、ジャスデビの姿見えるの!?』
「見えん」



まるで二人の姿が自身の視界にあるかのように攻撃を繰り返したクロウリーに問いかけるがバッサリと切り捨てられた。


「が、なんとなく気配はわかるようだ。噛み殺したいと血が騒いでな…ふはははは…っ」
「人間の吐くセリフとは思えませんよクロウリー」



目をぎらつかせるクロウリーの姿はまさしく獣だ。
こわい。


「私の言う通り動け。あの小僧共、叩くぞ」
「……髪の毛…?」



そう言ったクロウリーの左手から金色の髪の毛がすり抜けて落ちた。











 


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