「出口ならあるよ、少年」
アレンの背後に現れた見覚えのある人物がカギを差し出した。
その人物にアレン、ラビ、クロウリーが驚愕し、一斉に指をさす。
「「「ビン底!!」」」
「え、そんな名前?」
「ななっ?なんで?なんでここにいんの!?」
この人物はただの人間で一般人の筈なのにどうしてノアの方舟のなかに。三人が驚きの声を上げる中、神田が静かに言った。
「そいつ、殺気だしまくってるぜ」
男は口元を歪ませると煙草を持った手でアレンの頭をぽむ、と触る。
「どうして生きてた…?のっ!!!」
ゴン、と鈍い音がした。
男がアレンに頭突きをかましたのだ。アレンが激痛に頭を押さえる。
思わず私も自分の額をおさえてしまった。
「―――っつ」
「千年公やチビ共と散々言われたじゃねェかよ〜」
「なっに、を言っ」
男が不意に空を見上げるように顔を逸らすと先程までかけていた眼鏡が落ちた。
…おちた?
「出口、欲しいんだろ?やってもいいぜ?」
うねる黒髪を書き上げた男の額には聖痕。
そして左目に涙黒子。
ぞわっと全身を何かが駆け巡る。
『―――ティキ・ミック…ッ』
「この方舟に出口はもうねぇんだけど、ロードの能力なら作れちゃうんだな出口」
そういったティキの背後には巻き戻しの街でみたロードの扉が現れた。
「うちのロードはノアで唯一方舟を使わず空間移動ができる能力者でね。ど?あの汽車の続きこっちは出口、お前らは命を賭けて勝負しね?」
『……っ』
「今度はイカサマ無しだ。少年」
「どういうつもりレロ、ティッキー。伯爵タマはこんなこと…」
「ロードの扉とそれに通じる3つの扉の鍵だ。これをやるよ」
ティキの持っていた鍵が彼の指をすり抜ける。
「考えて。つっても四の五の言ってる場合じゃねぇと思うけど」
その証拠にとでもいうようにティキの頭上に崩れた建物の残骸が落ちてきた。
「たっ建物の下敷きになったである」
『……』
「死んだか?」
ちがう。死んでない。
あれの能力は触れるものを選べると言っていた。だから
「エクソシスト狩りはさ…楽しんだよね」
きんっと何かが飛んでくる。それを隣に立っていた神田が難なく手に取る。
手を開いて取ったものを見れば先程ティキが持っていた鍵だった。
「扉は一番高いところに置いておく。崩れる前にたどり着けたらお前らの勝ちだ」
「ノアは節だと聞いてますよ。どこがイカサマ無しですか」
アレンの言葉に、ティキが大きく笑った。
何が面白いんだと思わず眉を顰める。
「っと失礼。なんでそんなことになってんのか知らねぇけど、オレらも人間だよ?少年。
死なねぇようにみえんのは、お前らが弱いからだよ!!!」
それと同時に、再び地面が大きく揺れた。
「うわっ」
「ヤバい走れ、崩壊の弱い所に!!」
足元の地面が崩れ、先程くじいた足で動けずに身体が宙に浮き落ちる
『…ッ』
落ちる寸前でアレンに身体を抱えられ、助かる。
『アレンッ』
「掴まっていてください」
崩れた町が先の見えない暗い下へと落ちて飲まれていった。
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