確かにヘブラスカの見た目は怖い。
私だって最初はびびって泣いてしまったのだ。師匠に笑われたのもまだ記憶に新しい。
「くっ」
イノセンスを探られている感覚も気持ち悪かった。身体中を自分自身を見透かすように探られるのがどこか怖くて。
__なぜか、見られてはいけないものが暴かれるのが怖くて。
この後に自分の番が回ってくると思うとぞっとする。
「この…動け!!!」
アレンが叫ぶように言うとバチン、と何かがはじける音が聞こえた。
そしてアレンの左腕が無理やりに発動される。
『アレン!!』
「うっうわぁあああああ」
≪な…なんて子だ麻酔を…≫
痛みに悲鳴を上げるアレンにヘブラスカが声を掛ける。
そしてヘブラスカの額に浮かんだローズクロス。アレンと額を合わせると彼の左腕が突如輝きだす。
≪発動は…対アクマ武器と…適合者がちゃんと…シンクロできてなければとても危険なんだぞ…
…2%…16%≫
そしてその数字は少しずつ大きくなっていく。
≪78…83%!≫
数えられていた数字が止まり、二人の額が離れる。
そして同時に左腕の痛みが止まったのかアレンの顔色が良くなっていく。
≪もう平気だろう…どうやら83%が今お前と武器とのシンクロ率の最高値のようだ…≫
「シンクロ率?」
≪対アクマ武器発動の生命線となる数値だ…シンクロ率が低いほど発動は困難となり適合者も危険になる…≫
ゆっくりとヘブラスカによって昇降機へとおろされたアレン。
≪おどかすつもりは無かった…私はただ…お前のイノセンスに触れ知ろうとしただけだ…≫
「僕の…イノセンスを知る…?」
明らかに頭の上に?を浮かべるアレン。
≪アレン・ウォーカー…お前のイノセンスはいつか黒い未来で偉大な”時の破壊者”を生むだろう…私にはそう感じられた……それが私の能力…≫
「破壊…者?」
「すごいじゃないかー」
拍手を送りながら暢気に言うコムイ。
それ絶対煽ってる。
「それはきっとキミの事だよ〜!ヘブラスカの予言はよく当たるんだから。いやー、アレンくんには期待できそうだね」
「コムイさん」
振り返ったアレン。そして間髪入れずにコムイを殴りつけた、がそれはコムイの持っていたボードにガードされた。ボードは曲がってしまっている。
「一発殴っていいですか?」
「やだな。もう殴ってるよん。ごめんごめんびっくりしたんだね、怖かったんだねわかるよー、へブくん顔怖いいもんね」
アレンとコムイが話してる間にヘブラスカの腕が私に向かって伸びてくる。
それに応えて装備型イノセンスの双扇…風華を渡すと私と一緒に持ち上げられる
「入団するエクソシストはヘブラスカにイノセンスを調べてもらうのが規則なんだよ」
「そーゆうことは初めに言ってくださいよ!!アンジュも!!」
て、あれ!?と声を荒げるアレン。
ここだよー、と声を掛けると一瞬びっくりしたように目を見開いてすぐに理解したのか目を逸らす。
「イノセンスっていったい何のことなんですか?」
二人が話している間にヘブラスカにシンクロ率を調べてもらう。
装備型の扇の形をしたイノセンスとのシンクロ率は前に調べてもらった時よりも上がっていた。
そして今度は私の喉元へと腕が伸びてくる。
喉に寄生している私のイノセンスを探られる。
そして告げられたシンクロ率は前よりも上がっていたが、他の人たちと比べるとまだまだ低い数値。
測定が終わりゆっくりと昇降機へとおろしてくれる。
「ちゃんと説明するよ。イノセンスは此れから戦いに投じるキミ達エクソシストに深く関わる話だからね
この事実を知ってるのは黒の教団とヴァチカン、そして千年伯爵だけだ」
前に師匠、クロス元帥に連れられて教団に来た時に聞いたことがあった。
__全ては約百年前
ひとつの石箱が発見されてから始まった
後生いの者達へ…
我々は闇に勝利し
そして滅びゆく者である
行く末に起こるであろう禍から
汝らを救済するため
今ここにメッセージを残す―――
「そこに入っていたのは古代文明からの一つの予言と…ある物質の使用方法だった」
「ある物質って?」
「その石箱自体もそれだったんだが、”神の結晶”と呼ばれる不思議な力を帯びた物質でね。ボク達は”イノセンス”と呼んでる。アレンくんの左手や、アンジュちゃんの喉、双扇にある十字架の事だよ
対アクマ武器とはイノセンスを加工し武器化したものの呼称なんだ」
石箱の作り手はそのイノセンスを持って魔と共に訪れた千年伯爵と戦い打ち勝った者だという
だが、結局
世界は一度滅んでしまった
約1000年前、旧約聖書に記された”ノアの大洪水”がそれだ
石箱はそれを”暗黒の三日間”と記しているけどね
「そして石箱の予言によると世界は再び伯爵によって週末を迎えるらしい」
そして現在、予言通り伯爵はこの世界に再来した
ヴァチカンはこの事実により石箱のメッセージに従うことにした
それがイノセンスの復活と黒の教団の設立
使徒を集めよ、イノセンスはひとつにつき一人の使徒を選ぶ。それすなわち適合者。
適合者なくばイノセンスはその力を発動しない。
「イノセンスの適合者それがキミ達エクソシストのことだ」
しかし伯爵もまた過去を忘れていなかった
神をも殺す軍団を造り出してきた
「それがAKUMA。あの兵器はイノセンスが白ならば黒の存在である暗黒物質”ダークマター”で造られている
進化すればするほどその物質は成長し強化されていく
伯爵はイノセンスを破壊し、その復活を阻止するつもりだ」
イノセンスはノアの大洪水により世界中に飛散した。
「その数は全部で109個。我々はまず各地に眠っているイノセンスを回収し、伯爵を倒せるだけの戦力を集めなければならない。伯爵もまたイノセンスを探し破壊すべく動いている。
イノセンスの争奪戦争だ」
我々がこの聖戦に負けた時、週末の予言は現実となる
≪戦え≫
≪それがイノセンスに選ばれたお前たちの宿命…宿命なのだ………≫
大元帥の彼らが言葉を残し、照明が消されて姿が見えなくなる
「ま、そんなところだ。以上で長い説明は終わり」
アレンの前にコムイの右手が差し出される
「一緒に世界の為に頑張りましょう。一銭にもなんないけどね」
「…はい」
ぎゅ、とアレンは差し出された右手を握った。
「ようこそ黒の教団へ!
現在エクソシストはキミの入団で20人となった。ほとんどは世界各地に任務で点在してるけどそのうち会えることもあるだろう
ちなみにヘブラスカもエクソシストのひとりだよ」
「えっ!?」
コムイが軽く告げた事実にアレンは驚く。
私も最初聞いたときはびっくりしたから、
≪お前たちと…タイプはだいぶ違うが……私は例の石箱の適合者として…教団の創設時からずっといるイノセンスの番人だ…たくさんの…エクソシストと出会ってきた……
アレン…アンジュ…お前たちに神の加護があらんことを…≫
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