「教えてください、アクマ。誰に、何処へ、僕たちを連れてくるよう言われていたんですか?」
もう上半身しか残っていないアクマを前に物おじせずにアレンが問いかける。
バクとフォーの回復を終え、そっとアレンの隣に立つ。
「ダレに、どこへ…?くはは…助けテくれるナら答エルよ!」
「いいですよ」
少し間をおいて微笑みながらアレンが答えた。アクマは微笑むアレンを数秒見つめる。
「教えて?」
「あは、はは、はそんな気ないくせに!そんなキ無イクセに!この道化役者!!」
再び笑顔で問いかけたアレンにアクマがずい、と顔を近づけ、叫んだ。
「くくくっノア様だ、ティキ・ミック卿だよ!!江戸じゃ今ゴロどうなってるかなァ!?オマえらの仲間!!あそコにハ、ミック卿以外に4人のノア様ト伯爵様ガイル!!アァれ――ん?ヤバいんじゃなイ?」
突然叫ぶようにして言い切ったアクマにアレンがそっと左腕を突き出し、アクマの頭部へと指を駆けると、そのままピイ、と下へ引いた。
「ありがとう」
「ソコニある…ノアの箱舟に乗っテイケ…空間を超エテ、江戸にイケルヨ…」
「―――…どうしてですか?」
「ドウ、シテ…?ノア様ノ命令ダカラだヨ
イヤ…ドウダロウナ…」
やがてアクマの体に十字架が浮かび上がり、輝く。
「ナンダカネ、気分がスゴクイインダ…」
そう残して、アクマは破壊された。
「おやすみ」
破壊され、解放されたアクマに内蔵された魂を見送り、アレンが呟くのを聞いた。
「ウォーカー、アズナヴール」
バクに名前を呼ばれ、同時に振り返る。
その動きに合わせ、アレンの纏うマント、私が羽織る羽衣が揺れる。
――ーこれが、アレン・ウォーカー、アンジュ・アズナヴールの両名が自身のイノセンスの本当の姿を手に入れた瞬間であった。
記されたその名は、
” 神ノ道化 ”
” 戦乙女 ”
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