ふと気がつくと辺りはもう暗かった。どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。公園の電球がチカチカと今にも消えそうに点滅するのをただボンヤリと見ていて、そして気がついた。

 暖かい。

 季節は暑い夏を過ぎ、それでも日中少し暑いものの朝と昼には冷え込む十月下旬。身一つで出てきた私がベンチで寝ていれば寒く感じるはずなのに。

 泣いていたことと寝起きなこと、その二つが原因だろう。何だかとても気だるかった。それでもよっこらしょなんて掛け声を頭の中で唱えながら起き上がれば、パサリと何かが私の上から落ちた。


 慌てて拾おうとしたその刹那。横から伸びてきた手がそれを拾い上げ、そのまま砂をはらうように軽くスーツを叩く。突然伸びてきた手に驚きながらもその手の主を見上げれば見たことのない男がそこにいた。男はベンチに座る私に背を向けて立っていた。


 男がスーツを叩く間私と男は始終無言で、たいして経っていないであろう時間もやけに長く感じた。



(110105)



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テーマ「人外ファンタジー」
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