今日、大好きな彼に別れを告げた。
私にとって彼は世界そのものだと言っても過言ではなかったけれど、彼にとって私という存在はあくまで一時的なコイビトだったらしい。多分それが普通なのだろうけれど。
彼は残酷にも優しい人だった。私ではないあの女を好きになっても、彼は私と一緒にいてくれた。そして瞳にあの女への恋情を孕ませて私を抱くのだ。それは彼の優しさで、だけど私にとってはとてもとても痛いものであった。いつの日か彼は彼女への恋情を抑えきれずに私に申し訳なさそうに言うのだ。「別れて欲しい」と。
だから、それなら、と私から彼に別れを告げた。彼方ではない他の人を好きになったのだと嘘をついて。彼はやはり申し訳なさそうに微笑んだ。
ねえ、その微笑に少しの安堵が含まれていただなんて気のせいでしょう?
告げることの出来ない本心が体の中で暴れ回って泣きたくなった。
(101203)