そうして私は雪路さんのところで過ごすようになった。
 正直言って、雪路さんのところでの生活はすごく快適。あの家で借金を抱えて過ごしていた時の何倍も快適だった。もう通えないだろうなあ、とボンヤリ思っていた高校にも通わせてくれた。借金のカタなんていう、人権が存在するのかもよく分からない身分である私を、雪路さんは何だかんだ言いつつも、甘やかしてくれた。

 甘やかされて、優しくされて、好きにならない人がいる訳がない。

 私は、雪路さんへの好きって感情でいっぱいになった。


 好きです雪路さん。大好きです。
 ことあるごとに雪路さんへと、「好きです」と口にする。雪路さんが私のこの気持ちで埋もれてしまうくらいに。けれど、埋もれたはずの雪路さんはその度に、困ったように笑って起き上がる。私はそれでも別に良かった。

 だって、私は雪路さんに応えて欲しくて言うんじゃない。私は思ったことを口にしているだけなのだから。拒絶されなければ、何でもいいのです。


 普通に学校に通って、雪路さんへ「好きです」と口にして、ただただ普通に過ごしていたから忘れていた。雪路さんってヤクザさん、なんだよね。

 私は自分の身体から流れ出る血を見て、他人事のように今更なことを思った。
 学校帰りに、知らない男の人に襲われた。私を傷つける前にその男は、雪路さんの名前を連呼していた。雪路のせいだ雪路のせいだ、と。だから、その男は雪路さんへと何か恨みがあったのかもしれない。

 けれど、今はそんなことよりもただひたすらに痛くて痛くて熱かった。視界がゆらゆら、曖昧になっていく中で、雪路さんの焦った顔が見えて嬉しくなる。



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テーマ「人外ファンタジー」
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