雪路さん雪路さん。私が世界で一番大好きな雪路さん。たくさんの好きで貴方を埋めてみても、いつも貴方は起き上がってしまう。けれど、そんな貴方が大好きです。
むかしむかしのある日。そこまで昔ではないのだけれど、その日、帰ったら家の中には何一つ無かった。玄関に置いてあった靴箱が、まるごと消失していたことにはさすがにビックリした。リビングに行って、そこにあった家具が全部無くなっていたことには玄関の靴箱以上にビックリした。
どうしたんだろう。今思うと、どうしたんだろうじゃないだろう自分よ。と思ってしまうけれど、昔のことは昔。当時の私は少々頭のネジが緩かったのだろう。
どうしたんだろう。そう思って家具のないリビングをぐるりと見回して、それを見つけた。セロハンテープで壁に張られたチラシ。その裏紙に書かれた一言。
それを見て全て理解した。嗚呼、父と母は借金を抱えて逃走したのか。だから、ごめんなさい、なのね。
その時。辺り一面に響いたという錯覚に陥る大きな音がした。車のブレーキの派手な音。たくさんの足音。近づいてくる足音。
それが雪路さんとの出会いでした。
雪路さんはヤクザさんらしい。黒塗りの車に連行され、その車が何処かに向かっている間、私は雪路さんに事情を聞いた。
父と母はやはり、私の予想通りに返しきれない借金を抱えて逃げたらしい。そして、そのカタとして私を置いていったらしい。だから、雪路さんが私を引き取ることになったのだと。その時、私がどんな顔をしたかまでは覚えていない。
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