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「だ、大丈夫です!」
気丈に虚勢を張ってみせたつもりが、反対に声が裏返ってしまったのが自分でも分かった。目の前に差し出された彼の背中に動揺を隠し切れていない自覚はあるのだから。
片膝をつき背中を名前に差し出しているのは、自分よりうんと位が上の上司。何も言わずとも彼の行動が、おぶされ、と言わんとしていることは理解できたが、しかし同時それに甘んじることの畏れ多さも理解しているつもりだった。
「大丈夫です。ひとりで歩けますから…。」
「その足でか?」
「……う…、」
ぴしゃりと言ってのけるルヴァイドに名前は閉口を貫くことしかできなかった。だが名前が何も言わずとも、赤く腫れあがった彼女の足首がその答えを物語っている。
「本隊まで戻るのに何時間かけるつもりだ。」
「で、ですが…さすがに総指揮官様の背中をお借りするわけには…、」
しどろもどろになりながらも今なおルヴァイドの背に担がれることを躊躇い続けている名前に、ルヴァイドは痺れを切らしたように折っていた膝を伸ばして立ち上がると名前の方へと歩み寄った。
「まったく…手のかかる部下だな。」
「え?…きゃあっ…!」
ぐわんと身体が持ち上がる。視界がぶれる。状況を全く把握できない頭で反射的に瞑った目を恐る恐る開けてみる。…と、思いがけず近いところにルヴァイドの顔があって、どきんと心臓がひと際大きく脈打った。
「ルヴァイド様!?お、降ろしてください!」
「暴れるな。」
咄嗟に胸を押し返そうとした名前を落とさまいとするように、名前を抱え込むルヴァイドの腕に一段と力が籠る。
「…嫌か?」
「そんなわけないです!…けどっ…、」
「なら良かった。」
不意に見せた彼の安堵したような表情にただでさえ煩く脈動していた心臓が余計にどきどきと鳴っている。触らなくても頬が火照っているのが分かる。名前は真っ赤に染まった顔を少しでも彼に見られまいと唇をきゅっと結んで俯いていることしかできなかった。
本当はいつも願う希望的な欲
(貴方に触れたい。触れられたい。)