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「熱が下がらんな…。」
深く布団を被り横になっている名前の額に手を乗せて、ルヴァイドは思わず顔を顰めた。
彼女が体調を崩してから早二日目。なかなか熱が下がらない名前を仲間で代わる代わる看病していたが、どうやらこの二日間では彼女の容態にあまり変化はみられないようだった。
だというのに当の本人はというと、今もまさに彼の掌の下で、ルヴァイドの手って冷たくて気持ちいいわよねえ、などと呑気なことを言ってへらへらと微笑んでいるのだから、仕様がない。彼女の額から手を退けてから、はあ、とルヴァイドは深く溜息を吐いた。
「薬は飲んだのか?」
「…ううん。」
「何か食べたのか?」
「……ううん。」
「名前、」
少し語気を強めて諌めるルヴァイドに名前がしゅんとうなだれて深く布団をかぶり直す。全く彼女は、皆が、俺が、どれほど心配しているか分かっているのだろうか。
「なら、まずは何か食べろ。何か欲しいものは…、」
「……あの…、」
「どうかしたか?」
立ち上がりかけたルヴァイドの服の端を咄嗟に掴む名前の手。
「やだ…行かないで…ルヴァイド…。」
彼女の口から弱弱しく漏れた言葉にルヴァイドは驚いたように目を見開いた。普段は弱音を吐いたりしない彼女の口からこのようなか弱い台詞が出てくるとは…。
「食べ物を取ってくるだけだ。すぐに戻ってくる。」
ルヴァイドがそう言っても名前は首を横に振るだけで一向に彼の服を離そうとはしなかった。縋るような瞳でルヴァイドを見上げる名前に、ぐらりと頭の中で理性が揺らいだのが分かる。
それをなんとか押しとどめて、ルヴァイドは彼女の前髪をくしゃりと掻き上げると、ちゅっと音を立てて彼女の額にキスを落とした。
「そんなことを言ってくれるな…。お前の体調が悪い間、俺も我慢しているんだ。」
「…え……?」
「…とにかく、早くよくなってくれ。」
ルヴァイドがそう言ってぽんぽんと頭を撫でると、名前は名残惜しそうにしながらも彼の服からゆっくりと手を離した。
熱が理性にのしかかる
(たったそれだけのことで危うく落とされかける、なんて情けない理性。)