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桜が舞う、この季節で。


《 01 》






「お花見?」
『うん。場所取ってあるんだけど、澪も来るかい?』


朝起きたら、お兄ちゃんの姿が見えなかった。
いつものことと言えばいつものこと。けれど、今日は少し違ったらしい。


「時間、かかるよ?」
『澪が来るまで取っておいてあげるよ』


今日は3月31日、まだ冬休み。お兄ちゃんが休日なのに家に居ないのは、(お兄ちゃんが風紀委員長だから、)結構良くあること。だから今朝も、あぁ今日も風紀のお仕事かぁ、なんて思っただけで別に気にも止めていなかった。
自分ひとり分の朝食を作り、食べ終えて、流し台に置かれているお兄ちゃんが食べたんだろうもう一組のお茶碗とお皿も私の分と一緒に洗って、洗い終わった、その時に携帯に電話がかかってきた。ディスプレイに表示されていた名前は、『雲雀恭弥』。―――昔、それを見たお兄ちゃんが「兄なのに堅苦しい」と言って軽く顔を顰めていたのを思い出して、小さく笑ってから電話に出た。
その内容は、この通り。


「でも、お花見なんて・・・群れてる人、たくさん居るんじゃないの」
『大丈夫、風紀委員たちに誰も入れない様に言ってあるから』


・・・よくやるね、お兄ちゃん。


『一面桜だらけで、でも人っ子一人いやしない。いい景色だ』
「そっか・・・―――うん、判った。なるべく早く、行くね」
『うん』


なるべく早く行って、なるべく早めに帰ってくれば、被害を被る人は少なくなる、ハズ。
我が侭な兄を持つと妹が大変なのは、世の摂理なのか。―――更に、その我が侭に拍車をかける原因に私も入ってると思うと、とても申し訳無い気分に陥ってしまう。
だからか、その我が侭を諌める事が出来るのも私だけだと知っているからこそ、余計に気が重くなる。


『場所は、並盛中央公園の桜並木だから。このあたり一帯、風紀が占めたんだ』
「(自慢げに言われても)」
『南口に草壁が居るから、そこから入ってきて』
「・・・うん。・・・何か買ってくもの、ある?」
『あったら風紀委員に買ってこさせるから、澪は気にしないで来ていいよ』
「・・・。うん、判った・・・」
『それじゃあね』
「うん」


ぷつ、と電波が切れる音がする。それを確認後、私も携帯の終話ボタンを押した。


「・・・お兄ちゃん、やりすぎ・・・」


溜め息はころりと転がった。
取り敢えず、部屋着で出て行く訳にも行かない。クローゼットを明けて洋服をざっと見渡し、お気に入りの服装に着替えた。玄関前の全身鏡で、服装と髪形の最終チェック・・・うん、何処も変な所は無い。
―――さて。
雲雀恭弥の実妹、雲雀澪。今日も、お兄ちゃんからなるべく多くの人間を救えるよう頑張りたいデス。
・・・面倒だったら見捨てもいいよね。

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