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そして気付けば、囲まれている状況。所々に、もっと呼んで来い、人集めろ、などの声が響いている。その声をBGMにしながら、先ほど沢田先輩の胸倉を掴みあげていた青年が額に青筋を浮かべながら苛立たしげに笑んだ。


「まぁ、いい。―――中坊一人仕留める為に、柄の悪い後輩を呼び過ぎちまってな、」


それを、合図に。
今まで林の中に隠れてたのか、次から次へと出てくる小麦色の肌をした男の人たちに、私は軽く顔を顰めた。この人たち、虫みたいにワラワラ出てきて気持ち悪い。そっとお兄ちゃんに寄り添って顔色を窺うと、お兄ちゃんは無表情で(見ようによってはものすごくウザそうに)出てくる彼らをただ見詰めるだけ。沢田先輩は、どんどん増える人数に比例するようにどんどん顔を蒼くしていく。
もう一度、例の青年が笑った。


「奴ら、力持て余してんだわ」
「何人居るのー!?」


酷く焦った様に叫んだ沢田先輩を一瞥し、その後で周りの青年たちを見回しながら。
ぽつりと。


「『弱い者ほど徒党を組み』、・・・えっと、」


一瞬静まり返ったのを無視し、少し考えて、ああ、と思い出す。


「『身代わりの羊を探す』、だ。」
「(堂々と煽ってる―――!!)」


だって沢田先輩、その方が面白いでしょう。


「―――っ、・・・そ、うだね。強い者が現れた時、身代わりが沢山いた方が逃げやすいし」
「(ヒバリさん声震えてます笑ってんのバレバレです頼むから火に油注がないでください・・・!!)」


震える声で同意してくれたお兄ちゃんにも沢田先輩は確り突っ込んで。


「〜〜〜ッ!!! 加減は要らねぇ!! そのいかれたガキどもを締めてやれ!!」
「(明らかに禍々しい武器持ってる人居るんですけど!?)てゆーかヒバリさんでもこの数はヤバイんじゃ・・・!」

「(―――だったらお前も、戦え。)」

確かに、釘バットって在り得ない。と言うかネタが古くて笑えない。
銃声を背後にそんな事を思いつつ、周りに囲む人たちを見回し、さり気無く沢田先輩を視界に入れない様にしながら嘆息して。


「復活! 死ぬ気でケンカー!! オラァッ来やがれ!!」
「・・・余計だな」


呆れた様に呟きながらも、お兄ちゃんは文句を言うわけでもなく、ただ無表情にトンファーを構える。
その時、お兄ちゃんが何故か一瞬驚いた様に目を見張ると―――。


「たかが中坊だ、一気に仕掛けろ!!」


そう叫んだ青年を無視して、すっと視線を横に滑らせたお兄ちゃんは、(・・・澪、)何かから庇う様に極自然な動作で私を抱き寄せた。
その、直後。

ドンッ!!

お兄ちゃんの向こうで、爆煙が立ち上がる。
収まった後でお兄ちゃんを見上げると、むぅ、と拗ねた表情で煙の中心を見ていた。


「十代目!」
「助っ人とーじょー!」


銀の髪を爆風に靡かせ、手にダイナマイトを持ち煙草を咥えた獄寺先輩に、鉄のバットを肩に背負いつつふわりと笑んでいる山本先輩が爆煙から姿を表した。
どうせリボーン君の差し金か何かだろうと思うけれど、まぁ今の一撃で青年たち側に不穏な空気を漂わせたのは確かで―――そしてそれと同時、私やお兄ちゃんの言葉でただでさえ殺気立っていたのが更に殺気立ってしまったのも確かで。


「気に食わねーガキどもが・・・ゾロゾロと・・・!!」


ワラワラと湧いて出てきた貴方たちよりはマシだよ。という言葉は胸中だけに留めておいた。


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