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大切な大切な唯一の存在。


《 04 》






「僕は何時でも自分の好きな学年だよ」
「(意味わかんねー!!!)」
(同感)


お兄ちゃんのナイスボケな名台詞に、ツナさん―――そう言えば、さっき『沢田綱吉』って言ってた気がする。じゃあ沢田先輩か。彼がやはり胸中で突っ込みを入れて、私はお兄ちゃんの斜め後ろで内心で思い切り頷き返していた。
勿論、表面には欠片も現れてないだろうけれど。
その時。


「沢田ちゃん、俺もバイト断わっちった! 折角なら一緒がいいもんね!」


バタバタと、沢田先輩の後ろから走り寄ってきた男子生徒(お花見のときには居なかった人)が凄い笑顔でそう言うと、沢田先輩は振り返らないままで顔を引き攣らせ、目を半眼にして心底嫌そうに「げ、」と呟いた。
私に聞こえたと言う事は、勿論お兄ちゃんにも聞こえているはず。チラリと一瞥してみると、けれどお兄ちゃんは二人を見て面白そうに小さく笑った。
沢田先輩の、本人が見ていないところで見せたその正直なリアクションに面白味を感じたのだろうか。残念だねお兄ちゃん、先輩もお兄ちゃん相手に“相手の見てないところで”確りと突っ込んでくれているんだよ。
・・・その事を言ったら、先輩の身が危ないから言わないけどね。
頃合いを見計って、お兄ちゃんは先程の笑みを消し、今度は口角を吊り上げただけのそれで口を開く。


「聞いたよ。君たち、風紀委員に入りたいんだろ?」
「えー! 誰がそんな事を!?」
「彼に。」


ギョッとして叫んだ沢田君に答える為、ぴ、と隣―――即ち、輝くピラミッドに包まれてふわふわと浮いているリボーン君を指差したお兄ちゃん。その直後、「(あんのピラミッドパワーめが!!!)」額に青筋を浮かべながら胸中でリボーン君を大音量で罵った沢田先輩に、少し驚いて彼を見た。
私のこの能力は厄介なもので、相手が強く思えば思うほど大きな聲として私の脳裏に響き、マイナスの感情だったら頭痛や耳鳴り、眩暈や嘔吐感が大きく襲ってくる。逆に、プラスの感情ならばそれが私まで伝播してくるのだ。
感受性が高い、と表現できるのは出来るのだが、高いにも程がある。
けれどそれは、何故か、昔からお兄ちゃんが近くにいたりすると頭痛や眩暈が軽減したり、更にお兄ちゃんに触れている場合はお兄ちゃん以外の一切の聲が聞こえなくなるから不思議だ。
逆に、お兄ちゃん以外の人と触れていると、より強くその人の思いが頭に流れ込んでくるから、私にとって謹んでご遠慮したい状況であるのは確かな事で。
今回の沢田先輩の聲は、強く思ったのだろうか、その大きさに思わずびくりと肩を竦めたほどだった。
お兄ちゃんが近くに居るからこの程度で済むんだろうけど、もし居なかったら酷い眩暈を起こして倒れていたかもしれない。それくらい大きい聲で、彼はリボーン君とお兄ちゃんに突っ込みを入れていた。


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