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そのお兄ちゃんの、詰まらなそうな顔が一転した。口角はすぅっと、音も無く釣り上がる。目は楽しそうに細められ、くん、とトンファーを振り。


「二度と、花見をできなくしてあげよう」


呟くと同時、銀髪の人・・・ツナさんに獄寺と呼ばれた彼との間合いを一気に詰めた。目を見張らせた獄寺さんは、けれど直後にギリギリトンファーから逃れる事が出来る。
けれど、真下に避けた為に地面に膝を付く事となった。
―――お兄ちゃんが提示したルールは、『膝を着いたら』と言うもの。
この時点で、お兄ちゃんの勝利は決まる。


(でも、お兄ちゃんまだ続けそう・・・)


何だか、楽しそうだもん。
そしてやはり、案の定。


「獄寺は膝を付いた。ストップだ」
「やだよ。」


リボーン君の、止める気が更々無さそうな声に即答で拒否り、トンファーを振るう腕は止めないお兄ちゃん。最高に楽しそうな顔は、子供が見れば泣き出すんじゃないかと思うほどに邪悪なものになっている。瞳孔は開いて口角はさっきよりも釣り上がっていた。
・・・悪役の笑みだ。私はひっそりと溜め息を付いた。
その時、私は視界の端に動く人影を見る。

キィン!

振り上げられたトンファーを受け止めたのは、あの、黒髪の人だった。


「次、俺な。」
「山本!!」


実況中継宜しく的に叫んだツナさんによると、彼は山本と言うらしい。
と、同時。


(あ。)


楽しそうな表情からまた一転し、お兄ちゃんはその端正な顔に少し悔しそうな、拗ねた様な表情を浮かべた。
って、そう言えばお兄ちゃんのトンファーが止められてる。一体、あの山本って言う人の武器はどんな―――・・・。
えーっと・・・。


「山本のバット〜!?」


バットと言うよりも日本刀。殴打用武器と言うよりも刃物。
一体何処に日本刀なんて?


「何物騒なもん渡してんだよ!!」


ご尤も。
・・・と言うか、


「・・・銃刀法違反」
「聞こえねーな」


ぷーい、とそっぽ向いたリボーン君に少しだけムッとし、けれど彼を一瞥しただけに終わる。
勝負の結果の方が、気になるから。


「これなら、戦りあえそーだな」


に、と笑んだ山本さんが見える。
確かに、お兄ちゃん相手に丸腰は自殺行為だと思うし、武器があった方が勝率が上がるのは頷ける。けど、それを考えても山本さんはお兄ちゃんには敵わない。
―――戦りあえる、なんてレベルじゃ、ない。何と無く判る。山本さんは、戦いに置いては初心者だ。
・・・でも、戦い慣れれば多分きっと、この場の誰よりも戦闘センスに置いては―――。


「ふぅん、」


もう一度響く、金属音。
興味無さそうに呟いた言葉。


「どーかな?」


さっきほどじゃないけれど、お兄ちゃんの口元には小さく笑みが浮かんだ。


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